バイデン政権誕生で、米中貿易「第1段階の合意」はどうなるのか

Photo by Win McNamee/Getty Images


バイデン政権下での米中関係がどうなるかという点については、中国は交換条件を申し出ている。米民主党が掲げる多くの要求を中国側がのむ代わりに、米政府には上下両院で出されている数々の法案を取り下げてほしいというのだ。

現在の連邦議会では、必須医薬品を米国内での生産に切り替えるための法案や、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」親会社の多国籍企業バイトダンス(ByteDance)やファーウェイ(Huawei)をはじめとした中国の有名企業を標的にした法案が審議されている。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のマイケル・シューブリッジ(Michael Shoebridge)は、「中国の最大の望みが、バラク・オバマ政権時代の米中関係に戻ることだというのは周知の事実だ」と述べている。

中国の国務委員兼外相、王毅は、8月5日に行われた新華社通信のインタビューで、米国に新政権が誕生した場合には仕切り直しをし、米国との対話を「各レベルおよび各分野において、いつでも再開したい」と考えており、「どのような問題も話し合うことができる」と述べている

ただし、それはすでに起こっている。

国家主席の習近平は、トランプが大統領に就任して最初に会談を行った首脳だった。

ロバート・ライトハイザー(Robert Lighthizer)米通商代表は8月25日、中国の貿易交渉責任者である劉鶴副首相と、貿易協定の進捗状況について電話会談を行った。

王はインタビューで、バイデンに向けているに違いないであろうメッセージを発し、中国政府は米国と「協力」して、現在の緊張関係を緩和し、「衝突も対立もなく、相互に尊重し合った正しい関係へと戻る」ことを希望していると述べた。「相互尊重(mutual respect)」は、中国政府が好んで使う表現だ。

この姿勢は、バイデンのチームが打ち出している方針とうまく適合する。バイデンは、他国との連携とフェアプレーを掲げている一方で、トランプは対立的な手法をとっているからだ。バイデンは、政治においては政治家個人の影響力が大きいという信条を持つ。一方のトランプは政治を、取引や合併買収のように考えている。

しかし、シューブリッジが指摘するように、政治家個人がもつリーダーシップを強調するのは失敗だ。それは政治では通用しないし、取引が成立するやり方ではない。

シューブリッジは、「米中が戦略的・技術的な競争を繰り広げているという基本的な事実の前では、政治家同志の相性が持つ価値は低下するだろう」と述べている。「習近平とバイデンがこれまで共に食卓を囲んだ時間は25時間で、共に旅をした距離は1万7000マイルにもおよぶ。バイデンのそうした行動は習を喜ばせたと思うが、だからといって、習が両国間の問題について譲歩することはないだろう」

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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