もはや「米国化」ではない BTSの活躍から考える文化のグローバリゼーション

文化のグローバリゼーションはもはや「米国化」を指すものではない(Photo by Getty Images)


今日も韓国の孤立の名残はあります。フランスやドイツなど多くのG20経済圏では、2017年まではヒット曲の過半数は英語で歌われている曲でした。韓国では、ヒット曲は韓国語で歌われています。BTSも例外ではありません。彼らの歌詞の大半は韓国語で、英語の歌詞は部分的です。それでもBTSは2018年に音楽業界に世界的なセンセーションを巻き起こしたのです。

さらに、彼らの成功はボトムアップの努力によるところも大きいのです。多くのファンがミュージックビデオやパフォーマンスを自主的に英語に翻訳したり英語字幕を作成したりしてグループの活躍を助けました。また、BTSは国際的にブレイクした最初のKポップアーティストではありません。西洋ではサイが有名ですが、中国やベトナム、日本などアジアではより多くのKポップアーティストが大きな人気を集めています。

もちろん「ツバメ1羽来ただけで夏にはならない」ということわざにもあるように、フォンシやBTSが一手に文化のグローバリゼーションに変革をもたらすことはないでしょう。しかし、他の領域も同様に、文化的な影響力は米国以外からも発生しているのです。特にアジアの文化的な影響力は高まっています。

例えば、最初のAIアナウンサーは中国が開発し、北京語と英語を話します。ハリウッドは中国企業や中国人俳優から多くの影響を受けて協力関係を築いています。例えば、マット・デーモンと景甜が共演したグレートウォールや、共演者がすべてアジア人の今年のヒット作で原作も同じようにヒットしたクレイジー・リッチ!が挙げられます。

技術分野では、スウェーデンに拠点を置くスポティファイが最も成功を収めたストリーミングサービス企業になりました。スポーツ界では、ガバナンスに対する批判はあったものの、サッカーのFIFAワールドカップやオリンピックにおいて多様な国民や文化が称えられました。

グローバル文化の米国化を率先する者たちに向けられたあらゆる批判について、その最も有名で代表的な企業は、ポジティブな文化的変化をももたらしています。

存続と融合の文化


世界経済フォーラムのサーディア・ザヒディは著書「フィフティー・ミリオン・ライジング」において、マクドナルドはインドネシアやサウジアラビアなどイスラム主流国において女性を雇用する最初の企業になると指摘しました。

また、ペプシコは、インド出身のCEOインドラ・ヌーイのリーダーシップのもとに、甘い飲料水の製造を控え、炭酸水を販売しプラスチックを削減する活動をするソーダストリームのような企業に投資しています。

しかしこうした事実は、2018年のより大きな文化的見地を見過ごす要素となるかもしれません。カリブ海や韓国のミュージシャンは世界で最も人気を集める音楽を作ることができるという事実は、結局のところ、グローバル文化の米国化は決して避けられないものではないことを示しているのです。

それどころか、過去数世紀のあいだ変わらず、文化は互いに存続と融合を繰り返すでしょう。

私たちに重要なのは自分たちの文化を尊重することです。そして政策決定者やその他の関係者たちは社会における文化的な結びつきを強化し促進することが重要です。しかし、隠者の国の男性グループが世界の経済資本におけるパーソン・オブ・ザ・イヤーに選ばれるとしたら、単一のグローバル文化の到来はまだかなり先のことでしょう。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Peter Vanham, Head of Communications, Chairman’s Office, World Economic Forum

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