遺伝子工学と人類の未来は怖くてエキサイティング

ジェイミー・メッツル 未来学者、作家


──ポストコロナの医療とテクノロジーの関係は? 人工知能(AI)などの利用が加速するでしょうか。

デジタルテクノロジーの加速は間違いない。何年もかかるはずだった変化が週・月単位で進み、未来が現在になりつつある。パンデミックと医療、テックが交差し、オンライン診療の普及やロボティクス、AIなど、急激な変化が進行中だ。

在宅勤務が長引けば、医療の形も変わる。血圧計など、簡易な医療機器を自宅に備える人が増えるだろう。在宅検査の結果をAIが解読し、どの患者を先にどの病院で治療するかというトリアージ(優先順位の決定)を行う。数値に問題があれば、センサーが瞬時に伝えてくれる。テック化で、より手厚い医療を受けられるようになる。

米ミズーリ州セントルイス郊外にはオンライン診療専門のバーチャル病院があり、患者は自宅で診療を受ける。病院との最初の接点がAIになりつつある人は少なくない。私も、その一人だ。医療保険会社のアプリにアクセスすると、AIアルゴリズムが自動対応してくれる。素晴らしいイノベーションだ。

人間は共感性や創造性に優れているが、パターン認識や放射線画像診断ではAIが強い。人間のパフォーマンスのほうが医療過誤を招いたりする分野も出てくるだろう。AI向きの分野や仕事を分類し、AIが安全に目的を果たせるようなシステムを構築する一方で、人間は、人間の本領を発揮できる仕事に専念すべきだ。人間オンリーでも、AIオンリーでもない。AIと人間が協働する世界だ。


ジェイミー・メッツル◎未来学者、作家。シンクタンク「アトランティック・カウンシル」のシニア・フェローで過去にホワイトハウスや州政府への助言を行った。昨年、世界保健機関(WHO)「ヒトゲノム編集諮問委員会」のメンバーに選ばれた。

インタビュー=肥田美佐子

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