インドでの小売事業を掌握しようとしているのはウォルマートだけではない。フリップカートを巡る競売でウォルマートに敗れたアマゾンは、地元店向けのオンラインサイト、スマート・ストアズ(Smart Stores)を立ち上げ、買い物客は同社アプリを利用することができる。また、インドの巨大複合企業であるリライアンス(Reliance)も、消費者向け食料品販売サイトのジオマート(JioMart)を通じてインターネット部門を標的としているし、フェイスブックは先日同社に57億ドル(約6050億円)の投資を行った。
ウォルマートの事業モデルがなぜ海外で機能しないのかについては、これまで多くの人が疑問を呈してきた。しかし、満足できる答えを提供できた人はほとんどいない。同社が、ウォルマート発祥地であるベントンビルでのやり方を海外市場でも押し通してきたことが多いというのは事実だが、一部の市場では適応することも覚えてきた。
同社はこれまで事業を一から立ち上げたこともあれば、既存の小売業者を買収してきたこともあるが、どちらも成否を分ける要因ではなかった。提携企業と取り組んだこともあれば単独で臨んだこともあり、その場合も明確なパターンは見えてこない。また、日本のような成熟した市場に参入したこともあれば第三世界に参入したこともあり、こちらでも一貫した傾向はない。
同社がアズダを売りに出す(ウォルマートはこれまでの海外での事業売却と同様、同社の株式を一部維持するかもしれない)中で、インドが非常に重要な理由はここにある。米国では、同社の実店舗小売分野の市場シェアはほぼ上限に達し、オンラインセクターはアマゾンが支配していて、アルディやリドル、1ドルショップはウォルマートの低価格帯消耗品事業を少しずつ破壊している。こうした状況で、ウォルマートには成長市場が必要であり、その可能性が最も高いのがインドなのだ。
しかし、ウォルマートの実績と照らし合わせると、世界で2番目に人口が多いインドでの成功は確実視できない。同社には多くの強みがあるが、海外市場に進出した途端に多くのものが失われてしまうようだからだ。
創業者が古いボロボロのピックアップトラックを運転し、店舗を訪問して回っていたことで有名なウォルマートにとって、真に成功を収めたのは実際に車で店舗を見て回れる西半球の大陸のみという事実は不思議な現象だと言える。