男たちが夢のフィールドに立った日:TOKYOサラリーマン大遠投大会 in 東京ドームレポート

TOKYOサラリーマン大遠投大会 in 東京ドーム




東京ドームといえば、ジャイアンツファンはもちろん、多くの野球ファンにとって「聖地」とも言える特別な場所。その「聖地」でボールを思いきり投げることができる……元・野球少年だったビジネスマンたちのそんな夢を実現させたのが、4月10日(金)に行われた「TOKYOサラリーマン大遠投大会 in 東京ドーム」である。

「TOKYOシリーズ」と銘打たれた巨人 VS 東京ヤクルト戦の試合終了後に、大会は行われた。参加したのは、HPを見て応募した「60メートル以上投げることができる20歳以上の男性」、総勢200名。軟式球を使用して遠投を行い、その飛距離を競い合うというシンプルなルールである。

まずは参加者同士でキャッチボールをしながらウォーミングアップ。東京ドームのグラウンドに立った興奮からか、参加者の多くはどこか浮足立っているようにも見える。キャッチボールそっちのけで、観客席にいる家族に記念写真を撮ってもらう者もチラホラ。ボールを手にしてポーズを決めるその姿は、さながら勝利投手インタビューのようだった。

ウォーミングアップが終わると、参加者全員がマウンドに集まり、開会式が行われる。ジャイアンツ戦のスタジアムDJである司会の高橋大輔から「優勝者は4月24日、神宮球場で行われる巨人・ヤクルト戦で始球式を行うことができます!」と告げられると、それまで優勝賞品について何も知らされていなかった参加者たちから一斉にどよめきが起こった。
週刊ベースボール編集長・小林光男氏の開会挨拶の後、大会がスタート。「チャンスは1回のみ、しかもボールを持ってから15秒以内に投げないといけない」というルールのため、文字通り「一球入魂」のチャレンジである。普段は忙しく仕事に追われるビジネスマンたちも、この瞬間ばかりは「あの頃」に戻って無心でボールを放っていた。

 小学2年生から野球を始め、昨年まで社会人野球をやっていたという31歳の参加者は、子供の頃からのジャイアンツファン。「憧れのグラウンドで投げてみたい」と思って大会に応募した。原辰徳監督が現役で4番を打っていた時代からのファンだという彼は、当時のレプリカユニフォームを着て東京ドームで投げることができたことに、とても興奮気味だった。
現役時代からのブランクも人ぞれぞれ。22歳・会社員の参加者は「高校まで野球をやっていたので自信はあったんですけど……もう年ですかね(笑)」とはにかんでいた。大会中盤、フェンス直撃の遠投が飛び出し、参加者たちから歓声が上がる。投げていたのは、この4月よりIT業界で新社会人として働く22歳の参加者。大学まで軟式野球をやっていた彼は、予選1位の記録をあげてもなお「もうちょっと行くかと思ってました」と冷静に己を振り返っていた。
おそらく大会最高齢ではないかと思われる、草野球で長くプレーし監督も務めたという彼(57歳・会社員)は「15年もブランクがあるので……」と語っていたが、年齢を感じさせない精悍な顔つきは、スポーツマンそのもの。60メートルという記録は悪くない成績だが、「やっぱり運動不足ですね。久しぶりに『もっと運動しなきゃ』という気持ちになれました」と新たな決意をにじませていた。




全参加者の投球後、上位6名で決勝戦が行われた。なんと予選6位の参加者がフェンス直撃の大遠投を決め、大逆転で優勝をさらうというドラマティックな展開に。上位入賞者へ、「フォーブス ジャパン」発行元・アトミックスメディアCFO石原紀彦より目録が贈呈され、このささやかながらも熱い戦いに幕が降ろされた。




それぞれのフィールドで日々を戦うビジネスマンたち。東京ドームというフィールドは、彼らを童心に返らせると共に、新たな刺激と活力をもたらしたに違いない。

前田隆弘 / フォーブス ジャパン編集部

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