テクノロジー

2020.09.05 11:00

2023年に「金星を目指す」、格安ロケットRocket Labの巨大な野望

(C)Rocket Lab

(C)Rocket Lab

小型人工衛星の打ち上げを手がける「ロケットラボ(Rocket Lab)」は9月3日、自社で開発・製造を行った宇宙船Photon(フォトン)の打ち上げに成功したと発表した。同社は、8月31日に非公開でPhotonの打ち上げを実施した。

ロケットラボは、小型衛星「First Light」を搭載した同社製ロケット「エレクトロン(Electron)」をニュージーランドの発射場から打ち上げた。今回の打ち上げの主目な的は顧客企業Capella Spaceのレーダー衛星を軌道に投入することで、打ち上げから約1時間後に無事ミッションを達成した。

同社は今後、Photonプラットフォームを外部のスタートアップに開放し、民間企業の宇宙事業を支援していく考えだ。「軌道上におけるビジネスのやり方を根本的に変えられることを示せた」とロケットラボの創業者兼CEOであるPeter Beckは、声明で述べた。

ロケットラボは2006年の設立以来、一貫して小型衛星市場に専念し、スペースXやブルーオリジンなどの企業と一線を画してきた。

同社は2015年に3Dプリンターで製造したロケットエンジンを発表し、2017年5月に初のロケット打ち上げを成功させた。また、2018年1月には、初めて顧客のペイロードを軌道に投入した。その後、同社は11基のロケットを打ち上げ、55基の衛星を軌道に投入している。

ロケットラボの主力ロケットであるエレクトロンの打ち上げコストは、スペースXのファルコン9の約10分の1で、同社は格安な費用で打ち上げを代行する企業として支持を集めてきた。

ロケットラボは、これまでにベッセマーベンチャーパートナーズやData Collective、コースラ・ベンチャーズなどから総額2億5000万ドルを調達しており、直近ラウンドでの評価額は14億ドル(約1490億円)に達する。

ロケットラボは、今後数ヶ月間でPhotonプラットフォームの機能強化を図る。最初の顧客となるNASAは、2021年初旬に宇宙船「CAPSTONE」を打ち上げる計画で、ロケットラボに1000万ドルを支払う契約を締結した。契約には、宇宙船の打ち上げに加え、衛星バスを使った軌道への投入も含まれている。

Photonは、NASAの有人宇宙飛行ミッション「アルテミス(Artemis)」と同じ月軌道にCAPSTONEを投入する予定だ。

Beckは、Photonミッションで予定している他の顧客の名前を明らかにしていないが、政府や衛星スタートアップなど、幅広い分野から関心を集めているという。衛星スタートアップは、自社でゼロから衛星を開発しなくても、ロケットラボのプラットフォームを活用すれば迅速に打ち上げが行える。

2023年に宇宙船を金星に送り込む


ロケットラボは、カリフォルニア州ロングビーチに新たに設立した製造拠点で大半の部品や衛星を製造する予定だ。Beckは、エレクトロンロケットの製造を通じて、インハウスでの製造を決めたという。

「宇宙分野のサプライチェーンは非常に脆弱だ」と彼は話すが、ロケットラボがもう1つ自前で行おうとしていることがある。それは、金星に宇宙船を送り込むことだ。

Beckは、9月3日に行われたメディア向け会見で、今年8月に自社製の宇宙船を設計し、2023年に金星に送り込んで大気や生命体の調査を行うと発表した。Beckは、この宇宙船がPhotonプラットフォームをベースに開発すると述べている。

「金星へのミッションは、宇宙産業にとって新たな道を開拓することになる。他の惑星に宇宙船を送り込むことは、民間の宇宙企業が進むべき道だ」とBeckは語った。

編集=上田裕資

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