ビジネス

2020.09.04

ソフトバンク出資の「デジタル治療」企業、AI活用でさらなる成長へ

metamorworks / Shutterstock.com

カルディープ・シン・ラジュプットは2015年、より高い目標を達成するため、博士課程の修了を断念した。目標とは、人工知能(AI)を使って病気の発症を事前に予測することだ。

ウェアラブルセンサーが収集する情報は、治療と投薬に関する決定をより迅速なものにし、患者の全般的な健康状態を改善させることに役立つものになり得る。ラジュプットが共同で創業したバイオフォーミス(Biofourmis)はAIを通じて、心疾患の治療や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などさまざまな疾患の患者の状態を遠隔でモニタリングするための支援を行っている。

バイオフォーミスは9月2日、シリーズCラウンドで1億ドル(約106億円)を調達したことを発表した。ラウンドをリードしたのは、ソフトバンクのビジョン・ファンド2。既存投資家のEDBI、マスミューチュアル・ベンチャーズ、オープンスペース・ベンチャーズ、セコイア・キャピタルも出資した。今回のラウンドにより、バイオフォーミスは総額1億4500万ドルを調達したことになる。

ソフトバンクのビジョン・ファンド2は、ヘルステック分野ではこれまでに、液体生検のスタートアップ、カリウス(Karius)、デジタル調剤薬局のアルト(Alto)、精密遺伝子治療のエンコーデッド・セラピューティクス(Encoded Therapeutics)などにも出資している。

2019年にはフォーブスの「30 Under 30 Asia」にも選ばれたラジュプットは、「病気を治療し、管理するためのソフトウェアの使用方法は進化し、まったく新たな時代を迎えている」と語る。

インドのバンガロールで育ったラジュプットは、バイオセンサーとAI、ヘルスケアへの関心から、大学卒業後の1年間、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボに在籍。その間に睡眠時無呼吸と不整脈を検出できるアルゴリズムを構築した。

この分野の可能性に情熱を持つようになった彼はその後、シンガポール国立大学の神経科学の博士課程に進学。だが、同期生のウェンドウ・ニウとともに起業を決意。修了前の2015年に共同でバイオフォーミスを設立した(ニウは博士号を取得、現在は同社の最高個人情報責任者)。
次ページ > AIを使った「確実な」治療を目指す

編集=木内涼子

ForbesBrandVoice

人気記事