コロナ流行中にホテルのエレベーターを避けるべき理由

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次にホテルを予約する際には、低層階の部屋をリクエストすることを考えよう。階段を使うことは、普段とは別の意味でも健康に良いかもしれない。

エレベーターの使用が新型コロナウイルス感染の危険性を高める可能性があることを示す証拠は増えている。中には、感染者がエレベーターを降りた後でも内部にウイルスが残存し得ることを示した研究結果もある。

新興感染症ジャーナル(Emerging Infectious Diseases Journal)に先日掲載されたリサーチレターでは、中国で起きた新型コロナウイルス集団感染の経路をたどった結果、アパート内の同じエレベーターを使った隣人同士での感染にたどり着いたと説明されている。この2人は同時にエレベーターに乗っていなかったという。

ミネソタ大学理工学部の研究チームは最近、エレベーターを含む建物の内部空間での新型ウイルスの拡散モデルを作成。換気の状態や、エレベーター内で感染者が立っていた場所、感染者が内部で会話したかどうかといった要素を基に、ウイルス粒子の残存率を割り出した。

きちんと換気されたエレベーター内で感染者が呼吸のみをした最良のシナリオでは、感染者が排出した粒子の78%が空気中にとどまった。一方、換気が悪いエレベーター内で感染者が声を出した最悪のシナリオでは、粒子の99%が空気中に浮遊したままだった。外に排出される粒子の割合は、換気が良いエレベーター内でさえも15%に満たず、換気が悪いエレベーター内ではゼロだった。

ポートランド州立大学工学・コンピューターサイエンス学部のリチャード・コーシ学部長も4月、コンピューターモデルを用いて、マスクをしていない感染者がエレベーター内でせきを1度してスマートフォンで会話し、10階分移動して降りた場合に内部に残るウイルス量を算出。その結果、エレベーターが1階に戻ったときには、感染者が放出したウイルス粒子の約25%がまだ内部に残った状態となった。コーシはニューヨーク・タイムズ紙に対し「エレベーターには『会話禁止』の大きな張り紙をすべきだ」と語っている。

米疾病対策センター(CDC)はここ2カ月で、エレベーターの使用に関する勧告の内容を徐々に強化。6月には、宿泊を含む旅の指針を更新し、「階段の使用を検討すること。階段を使わない場合は、エレベーターを1人で、あるいは同居する人同士のみで使えるようになるまで待つこと」との文言を追加した。
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編集=遠藤宗生

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