中国の強力な「健康コード」の使い方 スマホ持たない高齢者トラブルも勃発

中国では日常生活の中で提示が求められる「健康コード」。どのように使われているのだろうか(Getty Images)


警察官がホテルに駆けつけたところ、ロビーには旅客たちが集まっていた。警察官が聞いてみると、高齢者たちは健康コードが何かということがよくわからず、スマホすらもっていない人もいた。警察官は旅客たちに健康コードについて穏やかに説明し、現場を鎮静化する一方で、警察の管理・専門部門で、社会の安定や住民の安寧などのを扱う「公安大队」に連絡して相談した。

まもなく「公安大队」の協力の下に、観光局や疾病管理センターなど関係部門に連絡をとり、健康コードを登録できなかった旅客の足取りを審査。10分後にすべての旅客の審査が終了した。ホテルはチェックインの手続きをすぐに開始した。当の警察官たちはホテル側と客から感謝されたとのことだ。

若年層と高齢者のネット普及率の格差大


2019年の中国国家統計によれば、中国のインターネット人口は約9億人、インターネット普及率は64.5%に達している。残り35%に相当する5億人がまだインターネットを利用していない。また、中国では高齢者が増えており、60歳以上の人口が2億5000万人で、全人口の18%を占める。しかし、高齢者のインターネット普及率は若年層に比べて非常に低く、10代から40代のネット普及率が90~100%に対して、55歳~64歳が20%台、65歳以上では8%台にとどまる。(2018年知研コンサルタント会社)

健康コードの提示が事実上義務化されるようになってから、高齢者が通院や買い物などで外出する時にトラブルに巻き込まれるケースが増えている。

先の百度の記事で紹介したバスから降ろされた高齢者に対して、市中からは同情の声が高まっており、「健康コードに代わる、紙の健康証明書を提示するようにしたらどうか」という代案も挙がっているという。

海外からの渡航者のため健康コード国際版の運用


一方、海外からの感染リスクを防ぐために、健康コードの国際版「防疫健康コード国際版」(ウィーチャットミニプログラム)が開発運用されている。中国行き飛行機に搭乗する乗客はウィ―チャットミニグラムを通じてオンライン申請により健康コードを取得し通関手続きを行わなければならない(7月29日中国政府告示)

登録内容は、氏名、パスポートナンバー、搭乗便名、連絡先などの情報のほか、いくつかの健康に関する質問に答える。質問は、「14日以内にウイルス感染者や疑いのある人に接触したか」、「発熱、呼吸道に異常がある患者に接触したか」、「職場や家庭で発熱、呼吸道に症状がある人が二人以上でたか」、「発熱、咳、喉の痛み、頭痛などの症状があったか」、「コロナウイルス感染検査を受け、陰性結果が出たか」などだ。

なお、海外から中国へ渡航する際の感染防止のアナウンスメントは変更になることもあるので、搭乗前に航空会社のHPをチェックされたい。


連載:中国のライフスタイルと働き方の新常識

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文=廣田壽子

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