45分を予定していた電話面接はわずか10分で切り上げられ、結果を待つまでもなく不採用だとわかりました。20回以上トライし続けて、やっと通過した書類選考。ようやくたどり着いた最初の電話面接が、この結果……。私は、敗北感に打ちひしがれていました。
しかし、2019年12月。遂に米アマゾン本社から、採用通知のメールが届きます。
2015年に履歴書を初めて送って以来、実に5年もの歳月が流れていました。採用試験に挑戦した回数は、50回を超えています。
「同じ会社の採用試験を50回以上受け続けた」というと、メンタルが強い、あきらめが悪い、などと思う方もいるでしょう。
しかし、決して精神論で達成したわけではなく、私のなかでは、あくまで分析と改善を繰り返したことで得られた結果だと感じています。ただ、「不採用=失敗」ではなく、目標達成に近づくためのプロセスのひとつに過ぎないとマインドセットできたことは、非常に大きな収穫でした。
一見達成できそうにない目標や特殊に見えるケースも、考え方や受け止め方をかえることで、肩の力を抜いてチャレンジを続けることが可能です。
今回のコラムでは、私の50回に及ぶアマゾン本社採用試験を振り返り、
・なぜ諦めることなく挑戦を続けることができたのか
・採用された最後の1回と落ちた50回の違いは何か
・結局のところ、何が大事だったのか
をシェアするとともに、そこから学んだ普遍的な考え方や気持ちのもち方を紹介します。
ジェフ・ベゾスの「ツーウェイドア」という考え方
アマゾン本社の採用は、書類選考、電話面接、最終面接の3ステップです。
最初は履歴書を送ることから始まるのですが、私はこの書類選考で20回以上落ちています。もちろん投げやりに書いたわけでなく、1枚1枚精魂込めて書いていましたし、時には友人に英文添削してもらいながら推敲を重ねていました。
何かおかしい。今のアプローチを変える必要を感じた私は、履歴書を充実させるよりもアマゾン社員とのコネクションをつくることにシフトチェンジしました。これにより、書類選考で通過するようになったのです。
何か新しいことを始めようとするとき、現状を変えようとするとき、「失敗したらどうしよう」という不安はつきものですが、そればかりを考えていたらなかなか行動に移すことはできません。
しかし、小さく一歩をスタートさせて、「思っていたのと違うな」と感じた時に、その都度軌道修正を行えば柔軟かつスピーディーに動くことができるはずです。
アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスは、後戻りできない一方通行の意思決定を「ワンウェイドア」、やり直しがきく意思決定を「ツーウェイドア」と表しています。
日本人や日本の企業は、ツーウェイドアであるにもかかわらず、あたかもワンウェイドアであるかのように慎重な議論を好み、意思決定にスピード感が足りず、結果としてアクションが遅れる。いわゆる大企業病といわれるような、機能不全に陥ることも少なくありません。