やり直しはきく。いま日本人がジェフ・ベゾスから学ぶべきこと

Photo by Alex Wong/Getty Images


アマゾンジャパンに入社してから10カ月がたった頃、アマゾン本社への転籍アプライを開始したのですが、転籍といっても、採用プロセスは社外からの応募と変わりません。

しかし、電話面接では社内ビデオチャットの利用を提案することができたので、相手の顔を見ながら話せたことで精神的なハードルが下がり、電話面接は通過できるようになりました。

最終面接に進んだのは、全部で5回です。電話面接を含め、不採用となったときには、必ずその理由や改善点のフィードバックを受けるようにし、その都度内省と改善を繰り返しました。

英語スキルが不十分などという、すぐには改善できないものは現状を受け入れ、努力を継続。それ以外のところでできる限りの準備をして補うよう工夫し、5回目の最終面接で採用となりました。

失敗をプロセスにおける実験のひとつと捉える


採用に至った5回目の最終面接は、「やれることはやり尽くしたから、これがダメならもう諦めよう」と考えていた、最後の1回でした。

ポジションは、アマゾンジャパンで担当していた部門と同じスポーツ用品のシニア・ベンダー・マネージャー。なんとしてでも合格したかったので、最終面接はオンラインではなく、シアトルまで直接赴き対面で行いました。正直「そこまでしなくても」と相手は戸惑っていましたが(笑)、たまたまシアトルに行く予定があるからついでに実施してほしいとリクエストして了承してもらい、結果として熱意を伝えることができました。

アマゾンの面接は、OLP(our leadership principles)という独自に設けた14項目に沿って質問がなされます。過去の経験や実績を深掘りしながら進むため、表層的な回答では通用しないハードな面接です。

最終面接を受けるにあたり、私はOLPに沿った数百問の想定質問とその回答を徹底的に準備しました。面接当日は、相手の質問の冒頭数ワードを聞いただけで、それがどの項目に関する質問で、どういう内容かを瞬時に判断することができたほどです。

また、シアトルでは、アマゾンやマイクロソフト本社で活躍する日本人に話を聞く機会も設けてもらいました。そこでは、どれほど優秀であっても、アンガーマネジメントができない人は決して採用されないこと、日本人の美徳は時として裏目に出ることなどを教えてもらいました。

奥ゆかしさや相手を気遣うという性質は、「自分の意見をもたない」と判断されることがあるのです。そのため、自信をもって臨もうというマインドに切り替えることができました。

そして、できることは全てやり切ったという実感を伴って面接に臨めたことがさらに大きな自信につながり、採用に至ったと振り返ります。

「アマゾン本社の採用試験を50回受けた」

そう聞くと、おかしなこと、特別なことのように聞こえるのですが、実際には採用に近づくための小さなトライアンドエラーの積み重ねだと捉えています。アーティストでもスポーツ選手でも、最初から全て成功する人などほとんどおらず、経営・ビジネスにも同じことが言えるはずです。

面接に限らず、何事もまずは一歩踏み出してみる。その後、状況に応じて改善を繰り返しながら少しずつ進んでいくのが良いのではないでしょうか。

何があっても耐え忍ぶ根性を鍛えるのではなく、現状を捉える視点を変える。私の場合は、不採用を「失敗」から「成功までのプロセス」「実験のひとつ」に変えられたことが、アマゾン本社の事業部長になれたキーだと実感しています。

文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二

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