やり直しはきく。いま日本人がジェフ・ベゾスから学ぶべきこと

Photo by Alex Wong/Getty Images


しかし、本当に後戻りができない意思決定というのは、実はほとんどないというのが私の見解です。これはビジネスに限ったことではありません。例えば、婚活パーティーで30人と縁がなかった方が31人目で結婚相手を見つけるなど、スポーツや資格試験、コンクールなど、もっと日常的なシーンにも当てはまります。

私の場合、アマゾン本社の採用試験を受けることは、やり直しのきくツーウェイドアの選択でした。

これはアメリカと日本の採用制度の違いによる部分も大きく、多くの米企業では「この部署のこのポジションのこの仕事」というように、かなり特定された「ポジション採用」が行われています。あるポジションでは不採用であっても、別の部署の別のポジションにはマッチする可能性が十分にあるのです。

また、採用担当者は直属の上司であり、採用の決定権もその上司が与える影響が大きいため、上司との相性も重要です。そのため、たとえあるポジションでは不採用であっても、この世の終わりのように落胆する必要はないと頭で理解することができていました。

企業経営でも個人の判断でも、ツーウェイドアの考え方を用いて、「失敗」を「成功に向けた実験のプロセスのひとつ」と捉えることで、スタートの一歩が踏み出せないという呪縛が解けるはずです。

私がアマゾンにこだわった理由


私がアマゾンに興味をもち始めたのは、2015年。パナソニック北米(アメリカ現地法人)で、ホームエンターテイメント事業部の事業部長にあたるシニア・プロダクト・マネージャーを務めていたときです。

当時、私が担当していたヘッドフォン商品をはじめとする家電マーケットは、全体的に伸び悩みの傾向にありました。数多くの小売店と取引をしていましたが、売上は横ばい。しかし、そのなかでアマゾンの売上は他社と比べて顕著に伸びていたのです。

私はリソースをアマゾンに集中するという判断を下し、売上を2年で3倍に伸ばすことに成功。そのとき、改めてアマゾンの可能性と魅力を感じました。

私には、素晴らしい日本の製品を世界に広めたいという思いがあります。アマゾンという場を利用することでそれが実現できると確信し、よりアマゾンに興味をもつようになりました。

また、アマゾンで働く人たちが非常に魅力的だったことも、入社したいと思った理由のひとつです。彼らの考えやスタンスは、私から見てとても先駆けており、次第に彼らと同じ土俵で勝負がしたいと思うようになったのです。

非ネイティブがアマゾン本社に採用されるための差別化戦略


私は経営に興味があるので、より経営者の視点に近いと考えるベンダー・マネージャーというポジションに絞ってアプライを行いました。

とはいえ、非ネイティブが米企業の顧客や文化を理解し、取引先との交渉や、商品選定・売り上げ・営業利益に責任を持つベンダー・マネージャーに就くには、マーケティングやファイナンスなどのあらゆる角度から物事を判断しなければならず、多数の候補者と差別化を図る必要があることは明確です。

手探りで行動し、失敗し、模索しながらも、結果的に次の3つのポイントが私の強みとなりました。
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文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二

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