新型コロナの感染が拡大したイタリアで、ペットの大規模な疫学調査を実施

Stefan Cristian Cioata / Getty Images


この疫学調査では、特に感染者の出た家庭のイヌにおいて、抗体保有率が高い傾向があることを示しているが、全体の結果から見て、人からペットへの感染が、高確率かつ容易に起こっていることはないと言えそうだ。

ちなみにPCR検査は、ウイルスの遺伝子を検出することで、「いまそこにウイルスがいる」証拠を見つける検査であり、抗体検査は、ウイルスが感染したとき、体の中でつくられる抗体(たんぱく質)を検出する。よって後者は、「過去に感染していた」痕跡を調べるもので、両者には違いがある。

とはいえ、これまでも言われてきた通り、不必要なペットとの濃厚接触は避けるという、飼養の基本には留意すべきであるし、家庭内にウイルスを持ち込まないこと、万が一感染した場合は、ペットも含めた家族との接触を避けることについては、重ねてその必要性を強調しておきたい。

また、これらの情報や報道を理解するうえでは、次のことにも留意したい。

日本国内で、イヌ2頭にPCR検査で陽性の結果が出たという報道があったが、うち1頭は、すぐに行われた2度目の検査では陰性であり、感染しているとは言い難い結果であったようだ。

ウイルスは、生物の細胞内に侵入し、増殖を始めることで感染とみなされる。一時的に体のある箇所に存在するだけでは、感染したことにはならない。容易に感染が成立する生き物(新型コロナウイルスの場合は人)と、そうではない生き物では、PCR検査の結果の評価にも差が出ることとなる。

身近なペットと新型コロナウイルス、および新型コロナウイルス感染症の関わりについて、あらためて紹介したが、しばらくは引き続き、さまざまな研究や調査の結果を注視していく必要がありそうだ。

参考文献:Paterson EI, et al.: Evidence of exposure to SARS-CoV-2 in cats and dogs from households in Italy. Bio Rxiv, July 23, 2020.

連載:獣医師が考える「人間と動物のつながり」
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文=西岡真由美

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