それでもたまってしまったら?「ストレスコーピング」という方法
しかし、ストレスをゼロにすることはできません。私たちにはストレスを解消しつつ、上手に距離感をとりながらストレスと付き合っていくことが求められています。ストレスをうまく解消できないと、何らかの心身への影響が生じてしまうことがあります。仕事を含めた日常生活に、心身への影響が何らかの支障を起こしてしまう前に、ストレスに対処する行動(ストレスコーピング)を行う必要があります。
図はNIOSH*の職業性ストレスモデルといい、仕事に起因するストレスを分析して、その対処に利用することができるので紹介をします。
*National Institute for Occupational Safety and Health(米国立労働安全衛生研究所)
1. 仕事のストレス要因:無理な仕事、辛い人間関係、将来への不安など
2. 仕事以外の要因:健康問題、家族の問題、通勤が辛いなど
3. 個人要因:性格、職種、年齢など
4. 緩衝要因:相談相手の存在、上司や同僚からの支援など
5. ストレス反応:不眠、不安、体調不良、欠勤など
6. 疾病:うつ病、適応障害など
ストレスコーピングを行う際には、まず、「仕事が辛く感じる原因は何か?」を特定します。これは比較的わかりやすいです。次に、上記の「1」から「6」のどこに働きかけを行うのが望ましいかを分析します。
例えば、上司に相談することは「4」で、仕事の量を減らしてもらうことは「1」です。家族の介護が負担で仕事に支障が生じている場合には、「2」への対処を行うことで介護の負担の軽減を図ります。
どこに働きかけを行うのが、効率的かつ現実的であるかを予め見極めてから行動することが、ストレスコーピングのポイントになります。
「No」と言うときは、代案を提示する
他人への配慮が重んじられている日本社会では、「No」と意思表示することは難しく、それに比べて外国人(特に欧米人)は躊躇せずに「No」を伝えることができるといわれています。
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私はこれまで国内企業および外資系企業で多くの社員と面接をしていますが、外国人の社員が「No」と言うことができずに、メンタル不調に陥ったケースも少なからず経験しています。欧米人の社員が上司の機嫌を損ねないために、「忖度」や「根回し」をする場面も当たり前の様に見てきました。
このことから「日本人」vs「欧米人」という単純なステレオタイプ論では語れるものではなく、企業文化、意思決定、業務内容、上司のマネジメントスタイル、社員の性格、社用語が日本語か英語なのかなどの多くの要因が、「No」と言える・言えない環境を形成していると私は考えています。