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2020.09.02 16:30

事業会社から調達する前に知るべき3つの投資体制の違い


(3)二人組合型

ファンドの資金は事業会社が提供し、その運用はベンチャーキャピタルが行うという方法を取るケースもよく見られます。Global BrainやSBI、Spiral Capitalなどが、このような「VC as a Service」を提供しているVCの一例です(略して「VCaaS」、「ビーシーアース」なんてどうでしょう)。この方法には様々な応用パターンがありますが、基本的には、事業会社の戦略目標を踏まえてVCaaSがファンドを運用するという契約を結びます。事業会社は普通のLP投資家のように管理報酬とキャリーを支払いますが、多くの場合、ファンドの投資判断に対して発言権を持ちます。

VCaaSは、関わっているメンバーのほぼ全員に多くのメリットをもたらします(※)。事業会社からすれば、人事部の給与表を崩壊させるような事態を避けつつ、投資のプロフェッショナルを雇えます。ベンチャーキャピタルは運用資産を増やし、それに伴いより多くの報酬を得ることができます。起業家側にとっては、VCをバッファーとしながら、事業会社から資金調達するメリットを享受できるかもしれないチャンスです。たとえ事業会社の戦略目標が変わってしまったとしても、ファンドを運用しているVCから引き続きサポートを得る道が残されているのです。

いずれのタイプの事業会社からの出資についても、現在にいたるまでのスタートアップへの投資期間や、そのトラックレコードについて検討することも大事です。バランスシート型の投資家であっても、長期にわたってスタートアップに投資していて、起業家の間での評判も良いなら、他よりも優れた選択肢である可能性があります 。この投資方法だから、この投資家の方が良いなどといった単純な話ではないのです。しかし、上に述べた投資の体制の違いを背景として知っておくことで、少なくとも次回以降の記事で取り上げるトピックの理解に役立つと思います。

※事業会社のアカウントを運用するVCは、構造的に利益相反のリスクが生じるという点で、機関投資家からはあまり高く評価されない傾向があります。例えば、ある事業会社にとって、投資対象としてだけではなく企業戦略的にも素晴らしいスタートアップがあるとします。その場合、VCはコアファンドから投資するべきでしょうか? それとも二人組合から投資するべきでしょうか? とても複雑な問題なので、また別の機会に記事として書くかもしれません。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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