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2020.09.02

事業会社から調達する前に知るべき3つの投資体制の違い


(2)ファンド型

もう1つの方法は、ファンドを立ち上げ、そこから投資を行うことです。通常は立ち上げた事業会社自身が唯一のLP投資家となります。参入障壁がより高いので、スタートアップへの長期的な投資に対して本腰を入れて取り組んでいる可能性が高くなります。

ただし、このタイプのCVCについては、十分に検討しておくべき注意点が2つあります。1つ目は金銭的な待遇に関する問題で、この点については、投資チームのメンバーが独立系VCのファンドマネージャーのように扱われているかどうかが鍵となります。独立系VCのファンドマネージャーは、キャリーをもらうだけではなく、個人資産を自ら出資するのが当然とされています(通常、ファンドの運用資産の1%程度)。こうすることで、ポストに長く就き、ポートフォリオのスタートアップへの投資に長期的に取り組むインセンティブが高まります。

実際のところは、ほとんどのファンド型のCVCはそのようなインセンティブを設けていません。これにはいくつかの理由がありますが、1つは単純に社内での印象の問題です。投資がうまくいった場合、ファンドマネージャーの報酬は社内の誰よりも高くなり、社長すらも超えてしまいます。人事部からすれば、決められた給与表に当てはまらない報酬はとても「不平等」に見えるので、許容し難いケースが多いでしょう。結果的に、優秀なメンバーは高待遇を求めて独立系のVCなどへといずれ転職していくか、独立してしまいます。これは事業会社の投資チーム全般に言える問題です。

もう1つの注意点は、意思決定に関わることです。ファンドに対して親会社が最終的な意思決定を行う場合、バランスシート型の投資と実質的に変わらない実態である可能性があります。とはいえ、ファンドでは投資に割り当てる資金が固定されているので、以前に承認した出資約束金額(コミットメント)を取り消すのは親会社であっても(不可能ではありませんが)容易ではありません。多くの場合、スタートアップへの投資がもはや優先事項ではないと判断した場合、ファンドの残りのコミットメントを投資しきって、次のファンドは立ち上げないという結論を出すでしょう。
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文=James Riney

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