没頭して、無心になれる。レゴジャパン「大人向け」戦略の狙い

レゴジャパン代表取締役社長 長谷川敦氏(撮影:小田駿一)


──レゴを組み立てる時間を「禅」的な時間と捉えるユーザーも多いそうですね。レゴをすることで、どんな時間が過ごせると考えられるでしょうか?

レゴを組み立てる作業に集中して、没頭することで、頭を空っぽにできるという点では、禅的と言えるのかもしれませんね。

私もそうなのですが、忙しい毎日を送っていると、自分でも気がつかないうちにストレスを溜め込み続けてしまうことがあるんです。また、リモートワークが続いたり、旅行や移動がまだまだ自由にならなかったりするなかで、オンとオフの切り替えも難しいですよね。そのストレスを解消にするには、いかに「オフの時間」を充実させられるかが、とても大事になってくると思います。



レゴで遊んでいただくなかで、私たちが大切にしている瞬間があります。それは、「Joy of building(創ることの楽しさ)、Pride of Creation(創ることの誇り)」の2つです。

「Joy of building」というのは、まさにモデルをつくることに没入する快感のこと。そして、「Pride of Creation」は、つくったこと、さらに出来上がった作品に対して、思わず誰かに「ねえ、見て見て!」と自慢したくなるような誇りに思う気持ちのことです。

私は、この「Joy of building , Pride of Creation」を、子供たちだけではなくて、いま大人にこそぜひ体感してもらいたい。それを自発的に感じようとすればするほど、「大人」の中に閉じ込められていた「子供」の部分が解き放たれるのを感じられるのではないかなと思っています。

「たまらない」を引き出すこだわり


──「大人のレゴ」は、子供向けのシリーズといちばん違う点はどこでしょうか?

一言でいうと「こだわり」ですね。「Joy of building, Pride of Creation」を大人に感じてもらうための工夫がいっぱい詰まっています。

例えば、映画に登場する1970年代式の車をリアルに再現した「ワイルド・スピード ドムのダッジ・チャージャー」には、エンジンや動くピストン、ウィシュボーン式サスペンション、ステアリングシステム、エアブロワーなど、本当の車好きの大人にも「こりゃたまんないな」と思ってもらえるようなポイントを詰め込んでいます。

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レゴ(R)ワイルド・スピード ドムのダッジ・チャージャー

「レゴアート」は、ポップカルチャーを愛してやまない大人向けに設計されたシリーズで、アンディ・ウォーホールの「マリリン・モンロー」やマーベルスタジオの「アイアンマン」など4種類があるのですが、パーツだけでなく、組み立てながら楽しめるサウンドトラックも提供しています。それを聞きながらつくることで、「Joy of building」により没入できる仕掛けをつくりました。

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レゴ(R)アート アンディ・ウォーホル:マリリン・モンロー

「グランドピアノ」は、ハンマーと弦の複雑な仕組みを細かいパーツで再現しています。さらにスマホのアプリと連動させれば、自動演奏もできるようになっています。ちゃんと鍵盤も音に合わせて自動でかちゃかちゃ動くんですよ(笑)。創る喜びはもちろんですが、完成した後もお酒を片手にじっくり眺めて楽しみたくなるようなプラスアルファの仕掛けを用意しています。

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レゴ(R)アイデア グランドピアノ

やっぱり簡単にすぐつくれてしまっては「Pride of Creation」は感じられないもの。だから、大人が何日もかけて少しずつ完成に近づいていく、その工程も楽しめるような「ちょうどいい難しさ」にデザインしないと、我々が目指す遊び体験を満喫していただけないと思っています。
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文=松崎美和子 写真=小田駿一

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