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2020.09.29 16:00

エンジニアの能力を引き出し、その熱量と技術を信頼する ウイングアーク1stの開発力を高めるCTOの想い

データの活用によって課題を解決し、人を、組織を、社会を変えていく──この目標の実現に取り組んでいるソフトウェアベンダー、ウイングアーク1stにおいても、達成の鍵を握っているのはテクノロジーの開発を担うエンジニアだ。

執行役員CTOとして技術マネジメントを統括し、単に技術を持っている人ではなく、技術を活かして課題解決に取り組む技術者をエンジニアと呼ぶと公言する島澤 甲に、ウイングアーク1stにおいて技術が持つ大きな意味、そしてエンジニアが果たす大きな役割について聞いた。


入社2日目の社員の提案でプロダクトの方針を転換


ウイングアーク1stのルーツは、ユーザー企業がコンピューター内に持つデータを望むとおりに紙やPDFなどに出力する、帳票関連システムの開発にある。1993年にスタートしたこの事業は同社の基幹ビジネスとなったが、2000年代に入ると、新たなソリューションとしてデータを紙ではなくモニター上に表示するダッシュボードの開発を思い立ったエンジニアが独立して別会社を起こす。このエンジニアはその後、古巣に戻ってBIダッシュボード「MotionBoard」を主力製品へと育て上げた。現在、ウイングアーク1stの代表取締役社長を務める田中 潤だ。

この田中とともにテクノロジーの開発に勤しんできたのが同社のCTO、島澤 甲。2008年の入社当時を次のように振り返る。

「僕が最初に担当したのが、『MotionBoard』の前身になる製品の表示エンジンの開発でした。ユーザーが必要とするデータをいかに速く、いかにわかりやすく表示するかが肝なんですが、使ってみるとこれが遅い。だからエンジンの書き直しを考えて入社2日目に、開発責任者だった田中(潤・現社長)のところに『こんなの、どうですかね」と持っていきました。で、翌日会社に来ると社内がザワザワしていて、呼び出されたと思ったら、『昨日の案でエンジン、全部書き直して』と。次の週にリリース予定の製品なのに、ですよ」

たとえば、折れ線グラフを表示する際に折れ線の本数が多くなってくると、それを1本ずつ描画する従来の表示エンジンは、グラフのデータが変更されると描画が重くなる。だが、島澤が開発した新エンジンでは数多い折れ線の描かれた画面を1つの画像データとして扱い、グラフが変更されてもその部分を修正するだけなので、描画が速い。こんな発想の転換が島澤にはあり、それを迅速に見極めて方針転換する柔軟さがウイングアークにはあった。

入社したてで当時20代後半だった彼が渾身の力を奮って書き上げたエンジン用プログラムはその後、改良を受けながら現在まで10年以上にわたって使われ続ける“名作”となった。「MotionBoard」が、BIダッシュボード市場をリードし、ウイングアーク1stの基幹プロダクトのひとつに育った原動力でもある。


BIダッシュボード「Motion Board」の表示画面例

「入社する前は帳票の作成・運用ツールの『SVF』で世の中のインフラを支えているカタい会社というイメージを持っていたのに、判断がものすごく速くて、よさそうなものは『やってみろ』となる。入社してすぐに大きな仕事を任されたときは正直、『いいのか、これで?』とも思ったけれど、感動しましたね、ベンチャースピリットがあって、エンジニアを信じてくれる会社なんだなぁと」

熱量あるエンジニアを信じ、裁量を与える


そもそも、島澤に重要なプログラムの抜本的な改善を託した現社長の田中からして、ウイングアークのベンチャースピリットや、エンジニアを信じてエンジニアに任せる文化を体現する存在だ。島澤が「MotionBoard」に続いてアップデートに注力したデータベース集計システム「Dr.Sum」でも、その特性は存分に発揮された。

「データベース製品は、僕が会社に入った時点で発売から十数年経っていて、『このままではお客さんが離れちゃうかな』という、次の転換点を求められているタイミングでした。そこで集計エンジンを世界一レベルまで速くすれば注目されるのではと当時の内野社長に提案したら、『そうしよう』と」

そのとき島澤は、強く感じたという、「エンジニアが熱量、エネルギーを割いていることを認められれば、裁量を与えられて、つまらないことを言われずに支援してもらえる会社だ」と。

「製品の核になるエンジンのようなパートの新規開発はギャンブル性が高い。開発に着手するのも継続するのも大きな経営判断です。でもウイングアークでは経営トップがそういう判断をするし、営業など開発以外の部門も支援してくれる。『3年開発してモノにならなければ問答無用で撤退』といった基準もなくて、実際、大きく伸びている製品は10年前後、エンジニアが情熱を注ぎ続けた結果という例が多いんです。」

データの正しい「可視化」が生む価値


島澤が現在CTOとして開発に注力している技術にはAI関連も含まれる。今年4月に発売された大型プロダクト「DEJIREN」でも、ユーザーがチャットで行う指示にもとづいて複数のシステムをつなぐためのコミュニケーションの核として用いられているのがAI技術だった。世界を変える存在として騒がれ続けているAIだが、島澤の見方は世間とは違う。

「『AIって何ですか』と質問されて理路整然と答えられる人は相当少ないですよね。そういうわかりにくさを利用して商売をしているケースがソフトウェア業界にもありますが、そういうアプローチは僕は好きじゃない。お客様にとってわからないものをわからないまま提供するのでは意味がないと思っています。未知のものを未知でなくしてくのがエンジニアの仕事だし、ウイングアークの役割も同じですから」

「The Data Empowerment Company」を標榜し、「UPDATA」を新たなビジョンに掲げるウイングアーク1st。データで人に力を与え、組織や社会をいい方向に変えていくというミッションは、確かに、「未知のものを未知でなくしていく」ことによって達成されるものだ。そして、同社の基幹ビジネスが対象とする帳票やBIダッシュボード、データベース、システム連携などはすべて、見えにくいデータを見えやすい形に表すこと、つまり可視化を進めていくために不可欠なツールでもある。

「把握できないもの、目に見えないものは怖いですよね。データにしてもウイルスにしても。僕は子供のころから、テレビのリモコンにしても、スイミングスクールの排水溝にしても、あるいは、世の中の仕組みにしても、構造に興味を持つんです。『こういう不思議な動作は、どういう構造から生まれているんだろう?』と。だから、今仕事としてデータの可視化に取り組んでいるのは、とても自然なことだと感じています」



大学では化学を専攻していた島澤がソフトウェアの世界に入ったのも、在学中、ネットワーク内のデータの流れを可視化するソフトを作ってみたら、想像していた仮説と実態が大きく違っていて興味を持ったことがきっかけだった。「データは人が意思決定するための源泉となる情報なのに、可視化のやり方しだいで、見る側の受ける印象が大きく変わって、意思決定の結果まで変わる。正しい可視化というのは人生をかけてやる仕事として面白いと感じた」のだという。

好奇心を持って臨むことで1000%の能力が出せる


島澤の可視化への取り組みは、実は仕事だけにとどまらない。自宅には液晶モニターが数多く並ぶ一室があり、画面に表示されているのは戸外の気象データや自宅の消費電力、通信などの状況。「消費電力というデータが見えるようになると『もうちょっと省エネしなくちゃな』と、具体的なアクションが取れる。これがデータを可視化する意義だと気づいたら面白くて、いろいろソフトを作ってしまった」結果なのだ。

「エンジニアが出せる能力というのは、指示されてやる仕事では70%だと言われるけれど、やりたいこと、やるべきことにについて自分で納得して取り組めているときは150%、いや、好奇心のギヤが噛み合えば1000%の能力が出せるもの。自分も例外ではないので、CTOとしての開発チームの運営でも、そういう環境を生み出して維持できるよう気をつけています」

島澤がかつて入社3日目にして「ベンチャースピリットがあって、エンジニアを信じてくれる会社」と感じたウイングアーク1stの企業文化は今も変わっておらず、それどころか、他ならぬ島澤本人たちによってさらに進化している。そこで生み出されるテクノロジーもまた、進化を続けていることは、ごく自然なことだろう。



▼ Forbes JAPAN × ウイングアーク1st連載「UPDATA」



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