大坂なおみ選手の「棄権」で再注目 米スポーツ界の抗議に変化

昨年の全米オープンに出場した大坂なおみ選手。今年は前哨戦となる大会での「ある行動」が注目された(Getty Images)


アメリカで国歌は、毎朝学校で歌われ、どんなスポーツでも試合開始前には必ず歌われる。アメリカ人にとって国歌へのリスペクトは絶対的だ。キーパニックの膝をつくというシンプルな行動は、当時問題視され、アメフトリーグNFLのトップやチームオーナーたちから試合に出ることを禁じられるほどの事態となった。2017年には、ほかにも国歌斉唱の際に膝をつく選手が増えたことで、トランプ大統領が、そんな選手たちをクビにするよう提言するまでに発展した。

今回のアスリートたちの試合拒否に対する反応は、その頃に比べたらずいぶん変わった。NBAも、野球メジャーリーグも、テニス界も、BLM運動のうねりからか、トップの人たちが、それまでの立ち位置を180度変え、抗議声明を出す選手たちのサポート側に立っている。


「BLACK LIVES MATTER」の抗議活動への連帯を示すパッチワークを腕に貼り、試合に出場するメジャーリーガーも (Getty Images)

また今回のNBAとWNBAがリードして起こしたボイコットでは、バスケットボールのスタジアムを選挙の投票所として開放することを要求し、聞き入れられている。これは再当選を狙うトランプ大統領にとっては痛手になることを意味している。なぜなら、大統領とその陣営は、選挙区を統一して数を減らし、投票所を閉鎖するなど、特にマイノリティーの人たちの投票所へのアクセスを阻止しようと動いてきたからだ。

野球ではジャッキー・ロビンソン、バスケットボールではアール・ロイド、テニス界ではアーサー・アッシュという、過去に人種の壁を破り、黒人のアスリート達への道を切り開いてきた黒人選手たちは、各業界で称えられ、記念日が設けられたり、スタジアムに名前がついたりしているにもかかわらず、リーグのトップやチームのオーナーは未だ圧倒的に白人がマジョリティーだ。

そんな中でリーグのトップの意識が根底から変わるのはまだ先かもしれないが、ここ数カ月の間で目に見える変化は、絶望の中に一筋の光を見るようだ。

ここ数カ月で警察に命を奪われたジョージ・フロイド氏とブリオナ・テイラー氏に加え、ジェイコブ・ブレイク氏の被害を決して無駄にしてはならない。


連載:社会的マイノリティの眼差し
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文=大藪順子

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