経済・社会

2020.09.02 06:00

中国、強硬テクノロジー戦略で既に世界のリーダーに

Photo by Noel Celis - Pool/Getty Images

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グーグルのエリック・シュミット元最高経営責任者(CEO)は先週、超党派政策センターで、人工知能(AI)に関するグローバルリーダーシップについて講演し、今後は中国が世界をリードしていくだろうと結論付けた。

筆者はかなり以前から、同様の主張を続けてきた。中国は、欧米にとっては受け入れ難いやり方をもってして、人類の将来を決定付けるテクノロジー分野での世界のリーダーとしての地位を確立した。その間に他の国々は傍観者に回り、米国はトランプ政権下でむしろ後退した。

シュミットは「中国は、さまざまな面で私たちを追い抜こうとしており、私たちが絶対にしたくないようなやり方で巧妙にことを進めている。中国については深刻に受け止めねばならない。中国は今後、経済と研究開発への投資を拡大し、研究能力を向上させ、新たな技術を応用し、コンピューター分野でのインフラを強化するだろう」と語った。

中国政府は以前から、自国のモデルは独自性がある上に他よりも優れていることを強調し、中国が世界の中心に立って人類により大きく貢献する時がきたと主張している。純粋に戦略的な観点から見ると、中国の政治体制と習近平が推進してきた国家資本主義改革は、大規模で絶対的なトップダウン型イニシアチブの数々を生み出してきており、効率性の大幅な向上を示している。

「中国のモデルはハイテク権威主義のビジョンであり、米国のやり方とは相容れない。個人的には称賛も支持もしないが、深刻に受け止めるべきだ。これには戦略遂行の点でメリットがある」とシュミットは指摘した。

シュミットは、中国が人工知能(AI)や貿易を牛耳る世界は多くの人々にとって良いものとは言えないと主張。中国の覇権に対抗するための長期的かつ資金が潤沢な計画が必要であり、今後5年間で研究開発費を倍増することを提唱した。

さらに、中国に対抗するには、トランプ政権が行っている貿易戦争や制裁、大統領令ではなく、素早い行動で中国を置き去りにするようなやり方が必要だと指摘した。現時点の問題は、中国が他国よりも素早く効率的に、障害なく技術開発を行えている上、優秀な人材の招致と囲い込みに成功していることにある。

筆者はこの点に関しても以前から警鐘を鳴らしてきた。ティム・ウーもニューヨーク・タイムズ紙に最近寄稿した記事で同様の指摘をしている。中国は一方的かつ不当なやり方により、リーダーシップの面で大きな優位性を得ているほか、世界市場へのアクセスは確保しつつも自国市場から他国を排除しているのだ。

シュミットと同じ見解を持つ人は増えているが、問題なのは中国が既に勝利していることだ。マクロ経済データではまだ証明されていないが、中国はアルゴリズムへ取り込むデータ量、AI関連の特許件数が世界一であり、最先端技術の導入もかなり先を行っている。中国は計画・集権管理に抵抗できない監視社会であり、国民の大部分は経済的福祉の向上と引き換えにこの社会契約を受け入れている。

民主主義を信じる私たちは、そのような強権の下での暮らしは好まないかもしれない。しかし、中国が既に勝利していることは認め始めたほうがよいだろう。

編集=遠藤宗生

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