コロナ禍で「日本経済がボロボロになった」のは本当か。データから考える

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さまざまな要因はあるが、百貨店にとって痛かったのは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛要請や非常事態宣言だろう。休館または一部店舗のみの営業、時短営業の実施などが、直接業績に響いた。

また、年齢が高いほど新型コロナウイルスに罹患した際に重篤化したり、死亡したりする確率が高くなることはよく知られているが、百貨店の主要顧客の年齢層が高いことも、大きく影響したと考えられる。

一方、コンビニやスーパーは、外出を控えた人たちの買い物需要を取り込むことに成功したと言える。さらにコンビニとスーパーを比較してみると、コンビニは百貨店ほどの落ち込みは見られなかったが、販売額は前年同月比で減少しているのに対して、スーパーは何とプラスである。この差はどこから生じたのか考察してみよう。

外出自粛によって人々の足が遠のいたのは主にオフィス街と行楽地であり、一方、近場ということで住宅街には人が多く残るかたちとなった。

コンビニの場合は、この3つの場所すべてに満遍なく店舗があるため、オフィス街と行楽地にある店舗が百貨店同様に大きく売り上げを減らしたものの、その穴を住宅街にある店舗が補ったと考えられる。

一方でスーパーは、多くの店舗が住宅街にあるため、ある意味「コロナ特需」を存分に享受することで、売り上げを伸ばしたものと推察できる。

印象を事実だと思い込むことの危険性


さらにデータを細かく見ていくと、新たな発見もある。スーパーを運営する各社は、多くの場合、月次の売上高の伸びを公表している。スーパーとひと言で言っても、郊外に大型の店舗を構える総合スーパーもあれば、店舗から半径1~2km程度の範囲にフォーカスした地元密着型のスーパーもある。前者にはコロナ禍による影響が逆風となり、後者には追い風となっている。

このように、データをGDPというマクロな視点から、スーパー各社の月次売上高というミクロな視点まで段階を踏んで分析してみると、コロナ禍の影響で日本経済はボロボロなのに株価は高止まっているからバブルだという印象論はかなり危険である。実際にはコロナ禍の影響を追い風にさらに業績を伸ばしている企業もあり、株価の上昇が実態に伴ったものであるケースもあるということだ。

ついついわれわれは印象論で語ってしまいがちだが、このようにデータというファクトに基づいて細かく見ていくと、単なる印象によって抽象的な理解をすることの危険性がわかるだろう。なので、若い人たちには、極力データに基づいて意見を述べる習慣を身に付けて欲しい。

連載:0歳からの「お金の話」
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文=森永康平

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