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2020.09.01

人種差別抗議デモが続く米国でKFCが目指すこと

Photo by Yagazie Emezi/For The Washington Post via Getty Images

白人警官によって黒人が殺害されたジョージ・フロイドとブレオナ・テイラーの事件を受け、過去最大といえる規模の、そして最も包括的な反人種差別デモが、世界各地に広がっている。

米国でほぼ毎晩行われている抗議デモに参加する何百万もの人々が掲げる「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter、黒人の命は大切)」のメッセージとその実現に向けた活動は、国民の大半の支持を得ている。

ある調査によれば、国民(消費者)の70%以上が、企業に構造的な人種差別などの問題に関する立場を明確にしてほしいと考えているという。そして、消費者たちのそのような考えは、多くの企業が多様性と平等の推進に向けた自らの取り組みについて見直し、強化を約束することにつながっている。

そうした企業には、レストラン業界の大手各社も含まれている。米疾病対策センター(CDC)のデータによると、ファストフード利用者に占める割合は、黒人が最も大きいことがその要因だ。

独立系の事業者からマクドナルドまで、ファストフード店のオーナーたちは、人種間の平等を目指す活動への寄付などに、より力を入れるようになっている。

KFCは対応するポストを新設


ヤム・ブランズ傘下のKFC USは先ごろ、平等と包括性に関する問題を担当するポストを新設し、フランチャイズ加盟店のビジネスコーチだったジョン・メイズをディレクターに任命した。メイズは今後、この問題に関するKFCの戦略の策定・実施を主導し、「自社を業界のリーダーとして位置付ける」ための努力を支えていくことになる。

こうしたポジションの新設は今年、各国で増加することが見込まれている。この傾向についてメイズは、今年に入って起きた(フロイドなどが犠牲になった)悲劇的事件とそれによって引き起こされた抗議デモにより、企業が取り組みを強化すべき問題への切迫感を強めているためだと語る。企業が人種的平等と公正の問題に関して自らと向き合い、見直すことが、かつてなく重要になっているという。

メイズはまた、現在行われている抗議活動からみても、(世の中が)以前のような状態に戻ることがないことは明らかだと指摘する。より多くの人が「意識的に、解決策の一部になろうとしている」ことからも、企業は人種差別や公平性、多様性といった問題について、より良い対応を実現していく必要があるという。

ヤムは以前から、多様性に関する取り組みにおいては業界を主導する存在とみなされてきた。経営幹部レベルにこの分野を担当するポジションを創設したのは、2011年だ。また、今年6月下旬には 「不平等の問題に取り組む」ため、向こう5年間に1億ドル(約106億円)を拠出することを約束すると発表している。

一方、その子会社であるKFCも、すでにこの分野における取り組みを進めている。多様性と包括性に関する諮問委員会を設立し、(ヤムのコミットメントとは別に)、100万ドルを割り当てている。また、KFCはこれらの問題がテーマのバーチャル・タウンホールや討論会なども継続的に開催している。メイズによれば、企業が自らの改善点を明確にする上で、欠かせないものだという。

そのほかメイズは、改善が必要な問題のひとつとして、「黒人経営のフランチャイズ加盟店が少ない」ことを挙げ、次のように述べている。

「より多様性のあるフランチャイズにすること、起業に向けた機会をより多く創出することに尽力しています」

こうしたKFCの取り組みは、将来にわたってブランドの成長を維持していくなかで、不可欠なものになっていくとの見方を示している。

編集=木内涼子

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