ビジネス

2020.10.03

店と消費者を幸せでつなぐ男は「ケーキのSaaS」で上場を目指す

Cake.jpの高橋優貴。店舗も消費者も、そして従業員も幸せにしたいと考えている


なぜ「ケーキ」だったのか。高橋には明確な理由があった。

「最初はギフト全般を扱うECサイトを立ち上げましたが、その後、ケーキに絞り込みました。ケーキの業界は職人の世界であり、アナログな面があります。今の時代に対応するために多くの課題がある。課題が多いと、その解決がもたらす影響も大きいのです。そして何より、マニアックに絞り込むことで世界観を作りやすく、消費者のニーズにも応えられます」

他方、洋菓子・ケーキ店にはアナログなりの「強み」があるという。

「なんといっても身軽さゆえに商品開発が早いのです。これはあっという間に生まれては消える流行に対応でき、逆にブームを作ることさえ可能です。課題の解決とは、このお店の高いスキルを活かす役割のことなのです」

ケーキ・洋菓子店が抱える前述の4つの課題は、小規模店ゆえに抱えるリスクだ。それをCake.jpに集約(出店)することで、webサイトで生まれた注文の製造依頼、配送、そして消費者傾向などをもとにしたコンサルティングや人材領域など、多くのメリットを提供できる。出店料がかかるのは他のECサイトと同様だが、通常の営業をしながら、Cake.jpからの売り上げがつき、集客にもメリットがあるのは大きな魅力だろう。

ケーキ専用ボックス
ホールケーキが崩れないために制作した専用の配送ボックス。少し揺れても中身はびくともしないという。

誕生日だからケーキ、ではなく、食べたいから理由づけする時代


消費者側から見てみよう。

非常に感覚的だが、都市部でさえ、いくら通りを歩いてもケーキ・洋菓子屋さんに当たることは少ない。欲しい時にかぎってそうなのだ。業界としてスケールしにくいからこそ店舗数も少ないのだろう。

それが、あるようでなかったこのケーキのECサイトを知れば、大きく状況は変わる。

「Cake.jpでは、オススメやバーズデーなどのいろいろなケーキやスイーツのカテゴリーで選ぶ楽しさがあります。人気の似顔絵や、お子さんのためにサッカーボールの形のケーキ、焼き菓子もあるし、人気のアイシングクッキーを指輪にしたり、さまざまです。何より、商品によっては最短で翌日、都内だと時間帯によっては当日の配送も可能なので、欲しい、食べたいという要望にすぐに応えられます」

ケーキの参考写真1
(左)メロンケーキは直近でももっとも人気を集めたオリジナルスイーツ/(右)アレルギー対応のケーキも種類が多い

ケーキのサンプル2
(左)写真を使ったバースデーケーキは定番人気/(右)おにぎりの形のオリジナルスーツなど変化に富んでいる

特に、オーダーケーキは、店舗の規模によってできることに差があり、コストも時間も要する。いたしかたない背景があるが、消費者の選択肢が広がるのは嬉しいことで、満足度が高い。

「そして注目すべきは、消費者の発想です。いままでは『誕生日だからケーキを買う』という発想でしたが、現在は、もちろんそういったご要望に加え『このケーキを食べたいから理由づけする』という考えが増えています。有名パティシエのコラボレーションや、面白い発想のケーキなどは、まさにこれが食べたいからという注文です」
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文=坂元耕二 写真=西川節子

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