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2020.09.14

コロナ禍でも独り勝ち「ポジティブ投資」の勝因

ジェームズ・アンダーソン(ベイリー・ギフォード共同運用マネジャー)


SMTの資産は、この10年で5倍に膨らんだ。米国の投資家が購入可能な投資信託では、世界長期成長株ファンドと「USエクイティ・グロース・ファンド(米国成長株投信)」が最も運用成績が良い。

ベイリー・ギフォードはまた、ESG投資(環境・社会・企業統治を重視した投資)に取り組んでいると胸を張る。アマゾンとは持続可能性と労働環境の向上に取り組んでおり、グーグルにはもっと税金を納めるよう促し、アップルに対しては高額過ぎると考えた役員報酬に反対票を投じたという。

では、ベイリー・ギフォードが何十億ドルも稼いでいるテスラへの投資については、どうだろうか。オーナーのイーロン・マスクは、悪しき企業統治の象徴とも言えそうな人物だが。

アンダーソンによると、マスクが18年にタイの洞窟で子どもたちの救出に当たったダイバーを小児性愛者呼ばわりしたツイッター上での言い争いや、米国証券取引委員会による制裁措置に発展した、株価“420ドル”でテスラを非公開化するという悪名高いツイートに、同社も懸念を募らせたという。それでも先ごろマスクに認められた500億ドル超の成果連動報酬に賛成票を投じている。これは、企業史上最も高額な支払いとなり得る報酬契約だ。

アンダーソンは言う。

「我々の義務は、世の中のためになる変革への途方もない意欲に出資し、途中のつまずきには目をつぶることだと思います」

つまり、細かいことさえ気にしなければ、楽観主義も報われることがある、ということだろうか。


ベイリー・ギフォード◎1908年、英スコットランド、エディンバラでオーガスタス・ベイリー大佐とカーライル・ギフォード弁護士が創業した投資会社。数学的指標に執着しない独特の投資ポリシーで成功を重ねてきた。本社入り口には「真の投資家は、四半期単位ではなく、十年単位で思考する」という看板が掲げられている。従業員1317人。約26兆円を運用している。

ジェームズ・アンダーソン◎ベイリー・ギフォードの共同運用マネジャー。1983年に入社、87年にパートナーとなった。「スコティッシュ・モーゲージ・インベストメント・トラスト」の共同マネジャーで、「世界長期成長株ファンド」の共同設立者。英国政府の要請でまとめられている英国株式市場に関するレポート「ケイ・レビュー」のメンバーでもある。オックスフォード大学出身。

トム・スレーター◎ベイリー・ギフォードのアメリカ株チームのトップで、「世界長期成長株ファンド」の運用者の一人でもある。2000年に同社入社後、12年からパートナーとなった。15年に「スコティッシュ・モーゲージ・インベストメント・トラスト」の共同マネジャーに任命された。アジア株のチームを率いたこともあり、急成長企業に興味を持っている。エディンバラ大学でコンピュータサイエンスを学んだ。

文=アントワーヌ・ガラ 写真=マード・マックレオド 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

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