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川村雄介の飛耳長目


お笑いライブはその負の側面を醸し出していた。喜怒哀楽は人間の原点である。これらは人どうしが密に接することからこそ生まれる。密を封じてしまったら、温もりも息遣いもない。笑いをこらえるなど一種の拷問でもある。どう考えても、持続可能ではない。日常生活にも当てはまる。

だがそうなると、ハナから抑制した生活態度を無視する輩が現れる。ネオン街で濃密な交流をする若者、マスクなしにゼーゼー息を吐き散らすジョガー、マイクを拭きもせず放歌高吟する高齢者などなど、東京の新規感染者のかなりの部分がそうした人々だと言われている。生真面目な8、9割の人々が、1、2割の「我慢できない」人々のために、社会的コストを支払わされている。

すべての人々が、少しずつでも自制することが、社会全体の自粛を緩和することにつながる。「我慢できない」人々をなくすことこそ、新しい生活様式である。そうなれば、お笑いライブの定員も7、8割まで高められると思う。

一方、新しい生活様式が示したポジティブな側面が熊本マスクだ。48万枚のマスク製作数に対して、熊本の世帯数は73万である。地元の主婦たちが県内需要のかなりの部分を補ったのである。地方にはこれだけの潜在労働力市場がある。そこに、コロナによって進んだリモートワークが援軍になる。おりから、ネット経由で仕事を請け負うギグワーカーが急増している。副業のチャンスが急拡大しているのだ。地方で本業に従事しながら、都会からのギグワークで所得増大を実現する機会が増している。コロナは禍ばかりではなかった。

閉店間際のお寿司屋さんで出くわした、件の劇場経営者が言う。「エンタメはそりゃ厳しいですわ。でも、政府の補助ばかり当てにしてたんでは明日はない。自助努力を極めること、それが新しい経営様式ちゃいますか?」


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。日本証券業協会特別顧問、南開大学客員教授、嵯峨美術大学客員教授、海外需要開拓支援機構の社外取締役などを兼務。

文=川村雄介

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