「自然首都圏」が生まれる時代


されど、これまでは、こうした新たなライフ&ワークスタイルを語っても「夢物語」にしか聞こえなかった。しかし、今回のコロナ危機の中で、多くのビジネスパーソンが、リモートワークに取り組み、大都会のオフィスに常時居なくとも、十分に高度な知識労働ができることが実証された。

そして、パンデミックの再襲来や首都直下型地震が懸念されるこれからの時代において、首都機能が東京一か所に集中することのリスクも、改めて指摘されるようになり、首都機能の地方への分散が、極めて重要な課題となってきている。

こうした中で、筆者の住む山梨県でも、豊かな自然環境の中で生活をしながら、テレワークで東京圏の企業や官庁の仕事をするという構想、「自然首都圏構想」を掲げ、官民連携の動きが始まった。

もとより、こうした「自然首都圏構想」は、東京に近い山梨県だけが掲げ得る構想ではなく、全国の自然に恵まれた地方都市やリゾート地も、こうした構想に名乗りを上げてくるだろう。

ダボス会議でも、永年にわたり問題が指摘されながら、解決策が見えなかった大都市への人口集中。

このコロナ危機は、そのトレンドに根源的な疑問を突きつけ、我々に価値観の転換を迫っている。

それはさらに、トフラーが予見したように、現代文明の、規格化、専門化、集中化、極大化、集権化といった価値観を覆すものになっていくだろう。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Agenda Council元メンバー。全国6100名の経営者やリーダーが集う田坂塾・塾長。著書は『運気を磨く』など90冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp

文=田坂広志

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