航空機の「自律飛行テクノロジー」のスタートアップXwingの挑戦

自律飛行できるように改造したセスナ208B Grand Caravanの前に立つSwingのソフトウェアエンジニアAdam Shelly(左)、CEO兼創業者のMarc Piette(中央)、CTOのMaxine Gabriel(Xwing提供)


パイロット不足を解決する


Xwingは、貨物輸送機が始動するときだけ地上管制官による監督を求める予定だ。同社によると、この技術によって貨物輸送のコストを20〜30%削減することができると同時に、パイロット不足を解消できるという。

PieteによるとXwingの自律飛行システムの導入費用は50万ドル強だというが、仮に200万ドルを要したとしても、貨物航空会社は経済的メリットが得られるという。

一方、フェデックスの元幹部で2017年に引退した業界30年のベテラン、Mark S. Blairは、自律飛行は貨物航空会社にメリットがあるものの、Xwingが主張するほどのコスト削減につながるかは不透明だと述べている。

小型貨物輸送機のパイロットは、操縦以外にも貨物の積み下ろしの監督や積載量とバランスの確認、機体の損傷確認など多くの業務をこなす。パイロットが不在になると、これらの業務を他の作業員がこなさなければならず、そのための訓練も必要になるとBlairは指摘する。

「パイロットがいなくなっても、構造的になくならない業務が存在する」と彼は述べた。また、航空貨物輸送業界は利幅が少ないため、テクノロジーの信頼性が極めて重要になる。

Blairは、自律飛行テクノロジーの中間的な役割に期待を寄せている。例えば、長距離飛行ではクルーが休憩するときのために予備パイロットを搭乗させる必要があるが、自律飛行によって法令が緩和されることが考えられるという。

フランスのタレスからも資金調達


Piette は、FAAから認可を取得するまでの間、他の航空機や障害物を検知したり、燃費を向上するために飛行速度や経路を最適化するといったパイロット支援にテクノロジーを使う予定だという。

Xwingは、これまでに1400万ドル(約14.9億円)を調達している。今年1月に実施したシリーズAラウンドではEniac VenturesやAlven Capital Partners、フランスの宇宙航空・防衛企業タレス(Thales)などから総額1000万ドルを調達した。

Xwing以外にも、ロサンゼルス本拠の「Skyryse」が小型ヘリコプター「ロビンソンR44」による自律飛行に成功している。同社が開発中の装着式フライト・コントロール・システムは、誰でも30分訓練すればタブレットとジョイスティックを使ってあらゆる航空機を操縦できるようになるという。

他にも、カリフォルニア州に本拠を置くスタートアップ「Elroy Air」や「Sabrewing」、ボーイング、ベルなどが長距離飛行が可能な重量物運搬ドローンを開発中だ。

編集=上田裕資

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