バイデン陣営は、両サイドの政治家たちがいま、エネルギーと環境という問題をどう考えているのかをあらわにした。このテーマを政治的に最もうまく利用する方法は、現在の経済状態に焦点を合わせることであり、それ以上でもそれ以下でもない。バイデン陣営は、その点をよく理解している。
バイデンは、昔からある階級意識に訴え、ごく一般的な有権者に向けて、最富裕層の有権者に今すぐ課税すればもっと健全な環境が手に入ると語りかけた。「グリーン・ニューディール」政策は、石炭など一部の業界を苦境に追いやり、太陽光パネルなど別の業界を強化するという点で、現在の経済構造に切りこむものでもある。対する共和党は、油田や製油所における雇用や、低価格のガスを話題にしている。
政治家が現在の経済状態に重点を置くのは理にかなっている。というのも国民たちはそれを最も気にかけているからだ(自分の家族が安全で健康であるかぎりは、という条件は付くが)。しかし、エネルギーと環境に関しては、ほかにも検討すべき問題がある。たとえば、以下のような問題だ。
米国の石油・ガス埋蔵量の健全性と持続性。製油所の経年数と充足度。パイプラインを、鉄道や道路での輸送と比べた場合の利点と欠点。原子炉の経年数と充足度(小型モジュール炉の利点を含む)。信頼性の低い配電網の改良。風力発電アレイや太陽光発電アレイによって生じる、鳥や環境への悪影響。風力発電技術や太陽光発電技術の改良。化石燃料から脱却するつもりなら、エネルギー貯蔵(蓄電池)技術の改良は絶対に必要だし、国内の燃料生産を制限する政策が持ちうる地政学的影響や、人間活動に伴う温暖化ガス排出が環境に与える影響の正確な評価も求められる。
長期的な経済やエネルギー利用、環境に現実的に影響を及ぼすこれらの重要問題を検討するには、それなりの忍耐力が必要だ。しかし政治家が、75語程度の粗い主張で気候変動を解決できると訴えているかぎり、国民全体の忍耐力を得ることは難しいだろう。