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2020.08.31

米国のテック企業を魅了する「コンフィデンシャルIPO」の利点

Spencer Platt/Getty Images

民泊大手の「エアビーアンドビー(Airbnb)」は8月19日、IPO(新規株式公開)のための書類を提出したと発表したが、ここで注目したいのは同社が“コンフィデンシャルIPO”と呼ばれるスタイルをとったことだ。

IPOの「秘密申請」とも呼ばれるコンフィデンシャルIPOは、従来の上場申請よりも柔軟な手続きを可能にするもので、企業にとってメリットが大きい。

コンフィデンシャルIPOのルーツは、オバマ政権がIPO市場の活性化を目的に2012年に成立させたJOBS法にある。“Jumpstart Our Business Startups Act”の頭文字をとったJOBS法は、雇用創出を担う新興企業を支援するため証券関連法を改革し、IPO時の制度面での障害を取り除こうとしたものだ。

この法律によって、年間売上が10億ドル以下の企業は秘密裏にIPO申請を行えるようになったが、2017年からは売上規模に関わらず、全ての企業がこの制度を利用可能になった。

コンフィデンシャルIPOのメリットは、売上高や利益などの経営情報を開示せずに上場申請を行えることだ。また、IPOの時期を明確にせずに手続きが行えるため、上場が遅れた場合でも非難されずに済む。

「ウーバーやリフトなどの企業は、この制度の申し子と呼べる存在だ」と、ジョージタウン大学マクドノー・スクール・オブ・ビジネス准教授のSandeep Dahiyaは述べている。スポティファイやSlack、パランティアなども秘密裏にIPO申請を行っていた。

ミスターIPOの異名をとるフロリダ大学教授のJay Ritterは「通常のIPOであれば競合企業に情報を知られるが、コンフィデンシャルIPOなら数カ月に渡り、情報を隠しておける」と説明する。

「上場のタイミングやIPO価格を柔軟に保てることは、企業にとって大きなメリットとなる。今日のような市場のボラティリティを考えれば、その利点はさらに大きくなる」と、Dayihaも述べている。

「市場とポーカーをするようなものだと考えて欲しい。伝統的なIPOの場合、市場は上場の数カ月前に企業の手の内を読めるが、コンフィデンシャルIPOであれば、企業は手の内を明かさずに上場手続きを進められる」と彼は続けた。
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編集=上田裕資

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