米SECが「直接上場」の規制を緩和、新株で資金調達が可能に

Photo by Drew Angerer/Getty Images

米国証券取引委員会(SEC)は8月26日、ニューヨーク証券取引所が申請していた上場ルールの変更に向けた提案を受け入れ、一般的なIPOよりもコストを抑えた上場スキームとして知られるダイレクトリスティング(直接上場)の場合でも、企業が資金調達を行えるようにすると宣言した。

SECが今回認可した新たなタイプのダイレクトリスティングは、一般的なIPOと同様に、企業が上場初日に新株を発行し一般投資家から資金を募ることを可能にするものだ。

これまでのダイレクトリスティングでは、既存株主が持ち株を売り出すことしか認められておらず、資金調達は出来なかった。しかし、今後は既存株主が株を放出すると同時に、新株を発行し投資家に売り出すことが可能になる。

IPOの場合、企業は新株を引き受け手となる銀行に手数料を支払いアンダーライター(引受証券会社)の役割を任せ、需給や価格の調整役を頼む必要がある。しかし、新株の発行を行わないダイレクトリスティングであれば、その手数料を節約できる。また、IPOの場合は、社員や既存株主らの株の放出を制限するロックアップ期間が設けられるが、ダイレクトリスティングはこの制限とも無縁だ。

ニューヨーク証券取引所は昨年11月にSECに提出した書類で、一定額の新株を売り出すことを条件に、上場時にオープニングオークションを実施し、企業が資金調達を行うことを可能にする新たなダイレクトリスティング制度を提案していた。

年金基金の運用団体などが所属する機関投資家グループは7月にSECに送った書簡で、ニューヨーク証券取引所の申し出を却下するよう求めていた。SECが導入を望む新たなダイレクトリスティングを認可した場合、投資家の法的保護が弱まり、市場が混乱する恐れがあると彼らは主張していた。

しかし、一部のベンチャー・キャピタリストらは既存のIPOの仕組みを批判していた。IPOは、銀行が彼らの顧客に割安な価格で新株を提供することを可能にし、銀行や一部の投資家が巨大な利益を得ていると彼らは指摘した。

ニューヨーク証券取引所の競合であるナスダックも先日、独自のダイレクトリスティング制度を立ち上げるため、SECに申請を行った。これは、スポティファイやSlack、そして最近ではパランティアなどの著名なテック企業が、相次いでダイレクトリスティングの実施に踏み切ったのを受けてのことだ。

編集=上田裕資

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