それを実現するための最適なフィールドとして、アクセンチュアを選んだ中村健太郎という男がいる。
大学卒業後、ITサービス企業や複数の外資系戦略コンサルティングファームを経て、2016年にアクセンチュアに転職。大手コンサルティングファームを駆け抜けてきた。
現在、ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループに所属し、インダストリーコンサルティング日本統括も兼務しているマネジング・ディレクターの中村。
「ビジネスも生態系も、淘汰されることで発展してきた」と話すのは、昨今の新型コロナウイルスの件である。未曾有の疫病に襲われたこの社会で、どのように企業、そして社会の未来をつくろうとしているのか。
テクノロジーが新規事業を生み、苦言が信頼を生む
そもそも、中村が所属するストラテジーグループは、アクセンチュア内においてどのような役割を担っているのだろうか。
「企業の戦略としてのデジタルトランスフォーメーションは、“変革する先”をどう定めるかが肝要です。加えて、ビジネスの前提を壊すことが飛躍的な発展を遂げるために必要だと私は考えます」
テクノロジーによって企業変革を見出してきたアクセンチュアの中で、今使えるテクノロジーを全て活用し、クライアント企業のありとあらゆる前提を壊す。そこから新しい企業戦略、新しい企業のあり方を作る、それがストラテジーグループのミッションだ。
長年、積極的な「研究と投資」を繰り返してきたことによって、テクノロジーを生かした戦略コンサルティングがアクセンチュアの強みの一つとなっている。ただ、最新技術を企業に実装することは予測不可能であり、リスクを伴うこともある。
では、中村は対峙する経営者をどのように説得しているのだろうか。
「予測不可能なものこそがイノベーションであり新規事業だと思っています。分かりやすくROI(Return on investment)を考えると、分母が投資になり、分子がリターンになるわけです。確定した分母(投資)と不確定な分子(収益)でROIを算出すると限りなく低い値になってしまう、そう、算数で弾くと新規事業は普通に考えたらやらないのです。
新規事業は、“未来を予測”するのではなくて“未来をつくる”こと。確率ではなくて、可能性に賭けてみるマインドが肝要だと思っています。新しい未来に向かうためにどんな船に乗るのか。経営者の方とは、その価値観を共有するようにしています」
新たなテクノロジー、イノベーションへの投資は会社の未来をつくる上で欠かせない。とはいえ既存事業の維持にこだわり、新規事業を怖がるクライアントも少なくないのではないか。そんな質問をストレートにぶつけると、中村は少し微笑んで、こう話してくれた。
「なぜ資本主義市場が発展したか。それは“淘汰”にあるわけです。既存のビジネスには賞味期限があり、賞味期限が近づいたものを延命しているうちに企業は弱まります。ニーズに合わないものならば、それは“使命を果たした”とも言える。新しいことにシフトすべきであることを、きちんと理屈立ててお伝えすることが我々の使命なのです」
クライアントの事業を強くしたいという思いがあるからこそ、中村は苦言を呈する。ときには冷血に算数の頭で考えることが、事業の成功の確率を高める努力であって、コンサルタントとしては非常に胆力が要るところだろう。
「長期に渡って関係性を築いてきたお客様は、私が苦言を呈するということ=言わなくてもいいことを言ってくれていると捉えてくださいます。苦言を呈すことは愛情があり、信頼を生むために大切なことなんじゃないかなと、個人的には信じています」
私たちは変革の“体現者”。だから自信を持って提案できる
2020年、ビジネスを語るうえで外せないトピックとして、新型コロナウイルスの世界的大流行が挙げられる。大恐慌を超える大不況の到来とも言われ、経済への影響は深刻だ。
beforeコロナと呼ばれる2020年3月ごろ、中村は新型コロナウイルスによる社会的ダメージをある程度予測してきたという。
「過去、ペストによって欧州の人口の3分の1が命を落とし、第一次世界大戦中のスペイン風邪も高い死亡率を記録しました。感染症は人の接触によるもの。グローバル化と都市化が進んだ現代は、ウイルスの恰好の好物なわけです。だから、『甘く見てはいけない』とお客様に伝えていました」
一方で、この混迷と混乱が、ビジネスや社会を大きく変革するきっかけであるとも捉えている。
「私が興味深く感じているのが、ペストによって民主主義が発達したと言われていること。民主主義をもたらした2つの要因は、ペストと十字軍だと言い切る学者もいる。また、1800年代に猛威を振るったコレラによって、フランスでは、下水設備の整備が進み公衆衛生法が制定されました。このように疫病が社会変革にもたらした事例が世界中にある。
経済界でいえば、SARSが広がる中、2003年、アリババがeBayを抜き世界一のEC事業者になった。感染症は社会を変え、歴史を進める作用があるので、当然ビジネスにも影響をもたらします」
今、経営者の考え方は大きく分ければ二分されている。今あるビジネスをどう元に戻すか、もしくはこの状況を踏まえてどう変革するのか。コンサルタントとして、この機会に新しい世界を作ることを提案したい、そして我々ならできると中村は話す。
それは、アクセンチュア自体が変革してきた歴史を持っているからだ。
アクセンチュアは1953年、アメリカにて電子情報システムの開発と統合のサポート業務を行うコンサルティング業務を開始した。
SIを基軸にして、ERPをオンプレからクラウドに移行、価格競争に陥りながらも2001年にニューヨーク証券取引場所へ上場。その後、時価総額も高い成長率を維持している。
「混沌とした中でも成長を遂げてきた背景には、トランスフォーメーションの積み重ねがあります。外部環境と自己を客観視しながら、ときには体制をガラッと変えることを繰り返してきた。リモートオンライン化もそのひとつです。
アクセンチュアは十年以上前からリモート、オンライン体制をとってきました。デジタルツールの活用はもちろん、オンラインでコミュニケーションを深める方法など、細かなノウハウも蓄積しています。
他社の成功事例を話しても説得力に欠けます。そうではなく、今、併走している私たちが変革した過去があると言えること、それがお客様を勇気づけ、背中を押すのではないでしょうか」
beforeコロナからアクセンチュアのオフィスはフリーアドレスで、在宅勤務やフレックス制度などの職場環境も整っていた
人の心を動かす、現代における「物語」をつくりたい
「コロナによるシビアなダメージの中で、日本企業の変革の契機が見えてきた」
そう語る中村に、アフターコロナ、ポストコロナに向かう今後、どんな未来にチャレンジしたいかを聞いた。
「自粛生活など、皆が自己を律して、このパンデミックを乗り切ろうとしています。だからこそ、企業が何のためにあるのか。誰のどんな悩みを解き、どんな価値を提供するのか、が、今、問われています」
中村はこれまで、日本企業の独自性、日本を代表する経営者のメッセージに惹かれ続けてきた。『主婦にいつでもウナギを食べさせること』をミッションとして、それを叶えたダイエーの中内功。『丁稚奉公してきた蕎麦屋の少年に、ピカピカのカブに乗ってもらいたい。それが自己肯定感を生む』と語った本田宗一郎。
人の心を動かすメッセージに溢れていた過去の日本。しかし多くの日本企業が、創業者の時代に創られたメッセージから、現代に適したものにアップデートできてないと中村は感じている。
「『1クリックで世界の情報へアクセス可能にする』と語るラリー・ペイジのように、現代らしい物語がいま求められています」
どんな領域でもいいから、変革の瞬間に立ち会いたい、こういう世の中をつくりたいという熱い思いを持っている人と、企業の変革を担っていきたいです。そして、自分も仲間として選ばれる存在でありたいですね」
取材も終盤に差し掛かった頃、コロナになって生活がどう変わったかと、ふと聞いてみた。表情は一気に砕け、少し照れながら、こう答えてくれた。
「8時半に家でミーティングを終えたあとも、子どもがまだ起きていて、宿題を見てあげられるのが嬉しいですね。満員電車に揺られながら遅い時間に帰って、家に着く頃には家族みんな寝静まっている。そんな生活をしていた頃より、今の方が充実しています」
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