しかし、社員が自宅で業務できるようデジタルツールを導入しても、新しい環境での業務フローをどのように組んだらよいのか、どのように人事評価をしたらよいのかなど制度面に戸惑う企業は多い。
誰も責めることはできない。年単位どころか月単位で急速に訪れた危機だ。誰がこのような世界を予測し、準備できたであろうか。
このような中、アクセンチュアへ支援を求める企業が増えている。「働き方の新しいスタイル」を、単なるデジタルツールの導入支援だけでなく、生産性を上げるためのトータルコンサルティングができるからだ。誰も予測できず準備できなかった世界なのに──。なぜアクセンチュアにはできるのか、実情を探る。
ツールを入れるだけではない。生産性を上げるのがアクセンチュアのバリュー
アクセンチュアの中で、主にクラウドの導入支援を担当している一人が白石昌靖だ。彼はテクノロジー コンサルティング本部ICI(インテリジェントクラウド アンド インフラストラクチャーグループ)でマネジング・ディレクターを務める。
白石の社歴は20年以上になる。現在のアクセンチュアを知るだけではなく、アクセンチュアのインフラがどのように構築されてきたのかをも知りつくす人物である。そんな彼にコロナ禍で起きたアクセンチュア社内の状況も含めて話を聞いた。
「アクセンチュアの社内インフラはとても考えられたものです」と白石は明かす。約30年前、新たなITのシステムや社内インフラを揃えるために入念な検討が行われました。コンサルティングを本業とするため、大半の仲間は社外で仕事します。自社オフィスではなくお客様先に駐在するのです。よって『社内システムという概念ではなく、社外で働くスタッフを支援できるシステム構築』にフォーカスすることになり、数年単位でのプロジェクトが進められてきました。ですが、単にツールだけを入れても生産性は上がりません」
白石はマネジング・ディレクターを務めるICIグループの強みを、「クラウドツールを導入するだけではなく、全体の最適化を図るために、全社の業務や人事評価などの制度設計、数年かかる移行期間までのロードマップを作る支援ができること。形になるまで支援できること、バリュー(価値)を提供できること」と表す。
白石の言う「単にツールだけを入れても生産性は上がらない」とは自社の試行錯誤から得た知見である。デジタルテクノロジーというツールだけでなく、新しい人事制度や評価制度の設計、社員の働き方や考え方を変えるといった、ソフト面の本質的な変更といった両輪がそろってこそ、本来の生産性を発揮できるという意味なのだ。アクセンチュアでも、Microsoft 365の新機能(Onlineアーカイブ、OneDrive、Teamsなど)を社内でリリースした際には、啓蒙やTipsが必要だったという。
ICIグループは、アクセンチュアの社内インフラ構築の歴史を体現し、アクセンチュアの知見をクライアントへ提供する部隊と称することができる。
想像を超越した、新型コロナへの対応スピード
アクセンチュアでは「バリュー」というワードをよく聞く。分析や提案だけなく、実行からクライアントの利益を生むまで支援すること、それが自分たちの存在価値だと。
これはクライアントに向けたことだけではない、社外にいる仲間に対して、いかに働きやすいシステム、つまりバリューを提供できるのか。
白石は正直に言う。「驚いた」と。新型コロナウイルスではない、20年以上勤めるアクセンチュアに対してである。
「自分で考えて自発的に行動するのがアクセンチュア。わかってはいましたが、想像以上でした。驚いたのは危機対応への個々のスピード感。新型コロナウイルス対策のグループが自主的に立ち上がり、世界中の拠点からオンラインツールの使い方や会議設定の効率化、新しい社内制度の作り方など、ソフト的な提案が集まったのです。そのナレッジがすぐに世界中の拠点へ拡散され、お客様にも提供されました」
世界に多くの拠点を構えているアクセンチュアではあるが、コロナ禍においては大半のコンサルタントは自宅での勤務を余儀なくされた。それなのに、なぜアクセンチュアの中枢のシステムにアクセスし、新型コロナウイルス対策へのナレッジを集め拡散することができたのか。
それは、常にクライアントへバリューを提供することにフォーカスする仲間達の高い意識があったからである。アクセンチュアとはそういう組織だ。さらに、そのような仲間を支援すべく、白石の言葉にあった「社内システムという概念ではなく、社外で働くスタッフを支援できるシステム構築」が確立していたからだ。
組織において、人をモチベートさせるのは大変な作業である。だからこそ、モチベーションを持った人材にストレスなく働いてもらう環境、システム作りは重要なのである。
ゼロトラスト。“信頼しない”システムが、自由を生む
「大切なのはゼロトラスト」と、白石は続ける。「アクセンチュアのシステム構築の基盤を支える考え方が、ゼロトラスト。『信頼しないシステム設計』だからこその利便性、自由があるのです」と。信頼していなのに自由がある。とても矛盾しているように思えるが、理屈はこうだ。
従来のセキュリティの考え方には、例えばオフィスの中だと安全、外は危険といった物理的な物であり、そこには境界線があった。境界線を引いて情報セキュリティを防御する考え方、それが「境界線防御」だ。
インターネットが発達してきた世の中においても、業務に必要な情報にアクセスする場合、危険な外、安全なオフィス内と、境界線防御されているため、出社するか特別な手順を踏むことになる。つまりはテレワークやオンライン会議などが推奨される「働き方の新しいスタイル」を実現することに対しての障壁は多いのである。
一方、ゼロトラストはこうだ。「信頼しないシステム設計」の考え方では、物理的な境界線を引かない代わりに、社員が情報にアクセスするごとにチェックし、監視する。恐ろしく思うかもしれないが、サッカーに例えると安心するだろう。
「フィールドでは全力を尽くしてプレイしてください。ルール違反があれば審判が笛を吹くから従ってと、そういうことです」
審判が見ているからこそ自由にボール(情報)に触れることができ仲間と自由にプレイ(業務)に集中できるのだ。アクセンチュアのフィールドには全ての仲間が立つことができるのだ。
クライアントにバリューを提供する、それが自分の仕事である
最後に、白石にこんな質問をしてみた。「自由に選べるなら、どんな能力を持つ人と働いてみたいか」、と。
「例えば、我々の組織のケースでしたら、『人』の分析をやりたい人などは面白いかもしれません。ICIはクラウドやインフラという、いわばテクノロジーの色が強いワケですが、我々が介入することで、人のモチベーションやエンゲージメントはどうなる、組織はどう強くなるといった観点もあると面白いですね。
自分も心理学を学んでいましたが、心理学や行動科学など、全く違うテーマをくっつけて新しいものを作るなど、新しいバリューを生み出し、けん引することに躊躇しない人なら一緒に働いてワクワクする。20年前の最新は今、レガシー。新しい働き方・技術を吸い込んで形にできる人とご一緒したいなと思いますね」
2020年初頭、足音も立てずに訪れた新型コロナウイルスにおける混乱。
そんな状況下、アクセンチュアは新しい業務フローや制度作りに対して、全世界のコンサルタントの知見が集まり、それをバリューとしてクライアント支援につなげた。
その知見とは、推奨されているテレワークやオンライン会議などの「働き方の新しいスタイル」と同じように、社外で業務を行うアクセンチュアのコンサルタントの生の体験、経験を元にした、「机上の空論」ではなく、実行できるまでの具体的なバリューであること。
そして知見が集まるプラットフォームが、「ゼロトラスト」。世界一優秀な仲間を信頼しないシステムである。
「お客様にバリューを提供する、それが自分の仕事である」
白石だけではない、アクセンチュアの皆が日常的に使っている言葉こそ、同社の本質であり、まさに「価値」と言えるのだろう。
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