200万人が視聴したオンラインフェスの舞台裏 ☆Taku Takahashi


200万人が集まった、ふたつの理由


「BLOCK.FESTIVAL」は、4月、5月、8月とこれまで3回開催し、合計で200万人もの視聴者が集まってくれました。その理由は、大きく2つあると考えています。

ひとつは、LINE LIVEをプラットフォームとして利用したことです。当初、LINE LIVEは、アイドルが活用しているイメージがあるので、出演するアーティストの雰囲気に合わないのではないかと「BLOCK.FESTIVAL」内では議論がありました。

ただ、「BLOCK.FESTIVAL」との強い関わりのあるアーティストがLINE LIVEと他のプラットフォームを利用した時、LINE LIVEの方が視聴者の数は多かったんです。

お茶の間ウケする音楽が好きな人も、エッジが効いた音楽を好む人も、日本で誰もが使っているプラットフォームがLINEです。LINEはチャット機能以外にも、LINE MUSICやLINEデリマ、LINEギフトなど数多くのサービスを提供しているので、将来的にはそれらのサービスとフェスが連携できるのではないかと考えています。

ふたつめに、ライブができない状況下で、音楽ファンたちがライブを求めていたことがとても大きいです。

「BLOCK.FESTIVAL」に出演したアーティストたちは、誰もが知るメインストリームのアーティストばかりではありません。新しい音楽性を提示して、現在の日本の音楽シーンを面白いものにしている、ツウな音楽ファンが好むアーティストたちです。

現在の音楽ファンたちは、AppleMusicやSpotify、LINE MUSICなど、さまざまなサブスクリプションサービスに加入している。サブスクで、あるアーティストの楽曲を聞くと、「このアーティストも好きではないですか?」と他のアーティストがレコメンドされる仕組みになっています。

言葉を選ばずに言えば“浮気性”である音楽ファンたちは、一人のアーティストを徹底的に応援するというより、お気に入りのアーティストが何人もいることが多いように思います。

コロナ以前から、インスタライブなどで生配信するアーティストはいましたが、サブスクが隆盛の時代だからこそ、一人のアーティストが出演するよりも、さまざまなアーティストが一緒になってつくるフェスの方が、音楽ファンたちは参加したいのではないのでしょうか。

だからこそ、多くの音楽ファンに支持してもらったのではないかと思います。



ちなみに、「BLOCK.FESTIVAL」は無料配信で、グッズの販売や投げ銭システムを導入しました。

無料配信にしたのにはまず、アーティストたちに「いくら必要なんです。お願いします」とは言わせたくなかったから。僕がかっこいいと思って出演してもらっているアーティストの、そういう姿は見たくなかったんです。だから、応援グッズや投げ銭システムで、みんなで作り上げていく仕組みにしました。

アーティストは、イベントが軒並み中止になり経済的な苦労を強いられていますが、それは音楽業界に限った話ではありません。そんな状況の中で、「買う気はなかったけどライブに感動して、思わずTシャツを買ってしまった」というコメントなどのリスナーたちの反応が、2回目、3回目と続ける大きな原動力になりました

3回目は、少しでも夏フェスの気分を画面越しに感じて欲しいと思い、ロケーションにこだわりました。潮の香りは感じられないけれど、雰囲気だけでも味わってもらおうと神奈川県葉山の海が見える場所から配信したんです

加えて、当日はオンライン上でアーティストと一緒に花火を鑑賞するために、アート花火を作っている人たちに相談をして、海上から花火を打ち上げました。僕も花火を上げるなんて経験はなかったので、公的な書類の準備から、海上保安庁とのやりとりなど、これまでにない経験もさせてもらいました(笑)。
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写真=小田駿一 リタッチ=上住真司 構成=本多カツヒロ

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