「有機農地25%」達成の必須要素とは
有機農地25%の成否のカギを握るのは、EU共通農業政策(Common Agricultural Policy、CAP)だ。CAPとは、1957年よりEUで実施されてきた農業政策のこと。CAP制度の下、EUの農家は直接支払いという助成金を受給してきた。
CAPはEUの行く末に多大な影響力をもつと考えられている政策で、一時期はEU予算の70%以上を占めていた。現在欧州委員会は2021年に始まるCAP制度の大幅変更に向けて新しい戦略計画を策定している。
「F2Fの多くの野心的目標はCAPとリンクしています。新CAP戦略計画にF2Fが反映されなければ有機農地25%は2030年までに達成しないかもしれません」とシュミット氏はいう。
「ここ数年、リトアニアでは有機面積が縮小傾向にあります。理由は、今期のCAP予算が早々に底をついたから。助成金が出ないなら有機農業を営むメリットはないと考え、慣行農業に逆転換する農家が増えています」と、リオレンタス氏。CAPのあり方で一国の有機生産状況はこうも変わってしまうということだ。
ただ単に生産を拡大すればいいわけではない。生産が伸びた分だけ消費を増やさなければ、持続可能な食のシステムにはならない。欧州委員会は需要拡大のため、学校や病院などの公的機関がサステナブルな食材を調達する際の最低基準を設けることを決めた。
「リトアニアでは10月に地方選挙を控えています。当協会では、各政党が学校給食食材の有機化を政策に反映できるよう勉強会を開催しているところです。その際、有機農業を環境教育の一環として学校教育に組み込むことを提案しています」とリオレンタス氏は言う。
「25%」という数字はどこから来たのか
そもそも有機割合を25%にするという目標数値はどのようにして決定されたのか。
「25%という数値がどこから来たのかはわかりません。各関連団体が提示した複数の数値の平均値をとったのかもしれません。国際NGOとしてEU政策に影響力を持つバードライフ・インターナショナルは『有機農地30%』を提示していたのに対して、IFOAM Organics Europeは『最低20%』を提案していました」とシュミット氏は振り返る。
さらに、「欧州で有機割合が最大なのはオーストリアですが、その割合が25%であったことも関与しているかもしれません。既に達成している国があるのだからEU全体としても実現可能だと考えたのかもしれない」と加えた。
同氏は、「有機農地25%」を掲げ、オーガニックがサステナブル食の中心としてF2F戦略目標内で位置付けられたことに対して、「EUではオーガニックが地球規模の問題の解決策の一つと見なされています。EUオーガニック政策に関わる私たちにとって、F2Fは1991年に策定されたEU有機基準以来の歴史的な大成功の一つです」とも話す。