今日はひとつだけ、最も簡単なコツを披露したい。フランス人と会うならフランス製のスーツかシャツかタイか靴か、何か当地で一目置かれるブランドのアイテムを取り入れよう。何も全身をトータルコーディネートする必要はない。何か単品でもこだわりのフランスものを混ぜれば、十分にリスペクトの表明となるだろう。
フランスといえば著名なデザイナーズブランドが百花繚乱の国だが、ここはあえての通なセレクション、つまりは専業ブランドから選ぶと、見る目を持つ人から見れば嬉しい話のきっかけとなる。例えばスーツはビスポークテーラーとしても名高い〈チフォネリ〉。シャツは「世界で最も着心地が良い」とも言われる〈シャルべ〉。ヴァンドーム広場近くの瀟洒な店を訪れたら、タイやチーフもついでに選ぶと良いだろう。靴は〈エルメス〉のフォーブール・サントノーレ店内にもコーナーがある〈ジョン・ロブ〉か〈J.M.ウェストン〉あたりから、あえてクラシックなオックスフォードシューズを選んでおけば間違いない。
同じ理屈で、イギリス人にはイギリスブランドを。例えばスーツはビスポークスーツで知られるサヴィル・ロウの〈ギーブス&ホークス〉。シャツは映画中でジェームズ・ボンドが愛用することでも知られるジャーミン・ストリートの〈ターンブル&アッサー〉。靴は言わずと知れた〈ジョン・ロブ〉といった英国王室御用達の店で揃えれば、どんな高貴な方にお会いしても恥ずかしい思いをすることはないだろう。そうそう、〈グローブトロッター〉のアタッシュケースは、誰にでも褒められる「きちんと見せる」ための秘密兵器だから、ベーシックカラーの中からひとつ持っておいて損はない。
同様に、アメリカ人にはやはりアメリカブランドを。ではニュージーランド人の場合は? スーツの裏に付けられた、ニュージーランド製ファインメリノウールのマークをちらっと見せてウインクすれば、相手もきっと笑顔になってくれるだろう。