クリエイティブディレクター/コピーライター

ビジネスパーソンの装いは、「ファッション」の単純なひと言のみで語られるべきものではない。究極目的は、見た目によっても「仕事ができそう」という安心感を与えることであり、必要以上に「お洒落に見せること」は、この場合不要であるばかりか、時によってはマイナスにすら作用してしまう。

ドレスコードを語る際、従来からよくTPO(Time:いつ/Place:どこで/Occasion:何をする目的で会うのか)という言葉が使われてきたが、国境を跨いでグローバルに活躍するForbes読者であれば、それをさらに進化させたTPNPO(Time:いつ/Place:どこで/Nationality:どんな国籍の/Person:誰と/Occasion:何をする目的で会うのか)として、自らの装いを鑑みる際の基準としたい。

この新連載では、世界中の大企業社長から大統領や貴族までを取材してきた筆者が、「ファッショナブル」「スタイリッシュ」「トレンディー」といった形容詞の陰でしばしばないがしろにされてきた基本のドレスコードを「ビジネスアタイア」として見直してみる。鑑識眼に優れた相手からも、国際的なバックグラウンドを持つ相手からも「わきまえている」と評価されるような正しく装う術と、そこにある嗜み的な喜びについても紹介していきたい。

Forbes BUSINESS ATTIRE──ビジネススキルとしてのスタイルを身につけること。それはきっと自分に自信を、相手に信頼を与える強力な武器となるはずだ。


スーツ

令和時代のスーツスタイルとは


梅雨が明けてからずっと、例年以上の酷暑である。そもそも2005年の「クールビズ」キャンペーンに始まった服装のカジュアル化がすっかり浸透し、もはやビジネスシーンにおけるノータイ、ノージャケット、スニーカー着用すら当たり前となりつつある時代に、あえて暑苦しいスーツを着る理由はどこにあるのだろうか。

装いの基本、それはまず相手に合わせることだ。言葉以外のコミュニケーション手段であり、礼儀である。こんな時代でも、こんな暑い季節にでも、もしも相手がきちんとしたスーツをお召しになる方ならば、リスペクトを表明するためにこちらもスーツで臨む。それも、TPNPO(Time:いつ/Place:どこで/Nationality:どんな国籍の/Person:誰と/Occasion:何をする目的で会うのか)を意識した、相手に対してカスタマイズした着こなしだ。

ラックにかかったスーツ

例えば銀座でフランス人のエグゼクティブと会食をするとき、あなたはどんなスーツを着ていくだろうか。あるいはイギリスで爵位を持つ方とお会いするとき。あるいはアメリカでカンファレンスに参加するとき。あるいはニュージーランドで取引先を訪ねるとき。あなたはよもや、一張羅の同じスーツを着るつもりはないだろうと願う。

都度、TPNPOに照らし合わせて装いを考えるのは面倒と感じるだろうが、その分の甲斐があり、報われるものがあるはずだ。つまり「面倒なスーツをわざわざ自分に会うために着てきてくれたのだ」と好意的に受け取ってもらえるとすれば、そんなにラクな「営業」あるいは「プレゼン」などないではないか。実力以外の手駒で相手の懐に入れる方法があるとすれば、実は身だしなみほど簡単なものはないのだ。

よく「自分だけスーツだった場合、フォーマル過ぎないか?」という懸念を耳にするが、そんな場合こそが「きちんとした自分」をアピールするチャンスとなる。「わざわざスーツでいらしてくださって、ありがとうございます。でも、私たちもカジュアルですし、どうぞ上着を脱いでラクにしてください」とでも言ってもらえれば、それを契機に場の雰囲気も和むだろう。「胸襟を開いた関係」が文字どおり、そこから始まるというものだ。

文=大野重和

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