儚くも荘重、数百トンの優美。即興芸術「砂像彫刻」を極める

「福隆国際砂彫刻芸術季2017」の優勝作品、宮本武蔵


日本は砂像後進国


砂の彫刻は世界中で制作されているが、日本はまだまだ遅れているという。

「私が作るような3〜5mの高さの作品も、海外のイベントだと、えんえん1キロも続く砂浜会場に100体くらい連なっていたりします。世界中からプロの砂像アーティストを招聘して、国際規模のイベントをやっているんです」

翻って、日本では、徐々に知名度は上がってきているとはいえ、イベントは地方で細々とやっているし、規模もまだ小さい。

「今後は世界規模の砂像展示をぜひ東京でやりたいですね。砂像の実物を多くの人にぜひ観ていただきたいと思います」

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『天使の報せ』千葉県 館山市 「館山ファミリーパーク」2019年4月 5(W)×4.5m(D)×3m(H)

計画も設計も拒否し、アーティストの柔軟性を試すように挑んでくる砂塊を、いわば「即興」で操るアーティストの弾力的な臨機応変。重機で砂水を固めるところに端を発するダイナミックなプロジェクトが孕む、数日で壊される儚さ、幽けさという宿命。その魅力に取り憑かれるアートファンは今後増えてきそうだ。

たとえば、銀座の目抜き通り。見渡す限りの視界に100体の巨大砂像が連なり、その壮観な風景が老舗百貨店やラグジュアリーブランドのウインドウに映し出される━━。もしかするとそんな日も、遠くないのかもしれない。


保坂俊彦(ほさか・としひこ)◎1974年 、秋田県能代市生まれ。1998年、東京藝術大学美術学部彫刻科卒業。2017年「福隆国際砂彫刻芸術季」で優勝したほか、千葉県旭市で2019年8月に制作した砂像アートが米「TIME」誌(9月23日号)の表紙を飾る。各種イベントでの制作のみならず、ディスプレイ用オブジェなどの立体造形物の制作、商業用原型の制作も手掛ける。作品には講談社「進撃の巨人」PR用砂像の制作、日清食品「カップヌードル」PR 用砂像制作なども。妻は、国内外にマイクロなバズを起こす『妄想工作所』のアーティスト、乙幡啓子

文・構成=石井節子 写真提供=保坂俊彦

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