儚くも荘重、数百トンの優美。即興芸術「砂像彫刻」を極める

「福隆国際砂彫刻芸術季2017」の優勝作品、宮本武蔵


制作は全国各地で行うが、素材の砂は「地産地消」で調達することが多いという。コストの縛りがあるためだ。
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「ひと言で砂といっても、A県の砂とB県の砂では組成が違う。つまり、毎回素材が違うわけです。崩れやすさ、固まりやすさが違うと、彫れる形、細工できる形も違う。素材の性質ありきでデザインもチューニングする必要があって、そういった意味でも砂像制作は動きながら決めていかなければならない、臨機応変を求められる作業といえますね」

ただ、事前に現地から、砂のサンプルは送ってもらうという。たとえば江の島でやるということになれば、海岸の砂か、もしくはその近くでとれる山砂を提供してもらい、その中で一番適したものを選ぶ。

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『ティラノサウルス』 千葉県旭市 2016年6月 「あさひ砂の彫刻美術展2016 砂の大恐竜展」 12m(W)×5m(D)×5m(H)
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「制作場所とは違う土地から運んでくるには許可の申請が必要ですし、お金もかかります。だから、選んだ砂を使えないことは多い。イベント主催者から『予算の都合でその砂は買えません』と言われることもしばしばあります。その場合、イベント会場がビーチならビーチの砂を使います。終了後に崩して現状復帰すれば購入する必要がないので。ただ、砂浜の砂は砂像制作に適さないことが多いので、主催者にはその弱点を事前に伝えます」

木枠を組んで砂の山を作ってくれる土建業者の調達も、やはり地産地消。クライアント側に施工内容をまず伝えて、現地で用意してもらう。

TIME誌からの「突然のメール」


冒頭に紹介した通り、保坂が千葉県旭市で2019年8月に制作した砂像アートは、地球環境の変化を特集した米「TIME」誌(9月23日号)の表紙を飾った。


『TIME』アメリカのニュース雑誌「TIME」誌の表紙を制作。千葉県旭市 2019年8月 30m×20m

「東京新聞主催で制作した『海の声新聞』という地上絵を見たという『TIME』の担当者から、ある日突然『地球環境問題の特集号を出すから、表紙を飾る作品をつくってくれないか』というメールが来ました。大まかなイメージはリクエストされましたが、基本的にデザインは任せてもらいましたね」


『海の声新聞』千葉県 旭市 飯岡海岸 「東京新聞 2019年5月30月掲載」2019年3月 50m×35m

ちなみに、『海の声新聞』は、砂を使って何か大規模なことをしたい、という東京新聞の意向で実現した。大規模な作品といっても何しろ新聞は平面だ。立体で再現することは難しいので、思い切って地上絵に、ということになった。

「地上絵に載せた記事は、記者の方が書き下ろしてくれました。私の弟子数名と美大の学生アルバイト、そして知人のアーティストや広告代理店社員の方、のべ15〜20人の人たちの協力を得ましたが、1週間かかりました」
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文・構成=石井節子 写真提供=保坂俊彦

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