儚くも荘重、数百トンの優美。即興芸術「砂像彫刻」を極める

「福隆国際砂彫刻芸術季2017」の優勝作品、宮本武蔵


砂はなんといっても自然の素材で、誰にとっても身近に存在するもの。国籍も貧富も問わず、誰もが公園の砂場で遊んだ経験があるに違いない。そんな親しみやすい素材が、思いもよらなかった荘重、精巧で優美な造型物に生まれ変わりうる。それが砂というものの魅力ではないか、と保坂は考えている。
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砂像は「アドリブの芸術」


では、いったいどのようにして、砂というどこにでもある素材がこれほどのアート作品に生まれ変わるのだろう。

たとえば高さ3メートルの作品であれば、3メートルの砂の山が必要になる。そのサイズになれば100トンからの大量の砂が必要だ。

「まず土建屋さんがピラミッド状に木の枠を作って、そこに重機で水と砂をパンパンに入れていくんです。砂の山ができたところで私が木の枠を外すと、中から押し固められた四角い砂が現れます」
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砂像制作は、その「山」を上から下に削っていくという作業になる。削ってしまった部分には、崩れてしまうため後から登ることはできない。だから、必ず上から彫り始める。

「砂像制作はアドリブがすべてだ」と保坂は言う。制作前には、建築の設計図のようなものを用意するのかと思いきや、大雑把なラフ画のようなものしか描かないのだという。


制作前に描く「ラフ画」(『ガネーシャ』のもの)

実は保坂も砂像制作を始めた当時、10分の1、20分の1の精密な模型を作っていた。だが、実は枠を外した時点で、固まっていたはずの砂の角がドサっと落ちてしまうということがよくある。

「たと
えば端から10センチのところを削る設計で臨んでも、枠を外した時点で20センチ、30センチと、ドサっと砂が落ちてしまう。そんな前提だと、事前に精密にデザインしても意味がないんです。むしろ精巧な図面があればあるほど、どんどん辻褄が合わなくなってしまう」

だから、もう、その場その場のアドリブでやるしかないのだ。

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『ガネーシャ』秋田県 三種町 「サンドクラフトin みたね2019」2019年7月 5m(W)×5m(D)×3m(H)
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文・構成=石井節子 写真提供=保坂俊彦

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