ビジネス

2020.08.28

食卓のあたりまえに新しい価値を生む「育てるしょうゆ」の試み

キッコーマン食品 花田洋一(左) 島田典明(右):提供写真


ボトルに『発酵元液』と『しょうゆ種』、『杉玉』を入れることで発酵がスタートし、日々変化する味や香りを楽しめる仕組みです。

また、2カ月に1回新しい発酵元液が届くため、それをつぎ足していくことでまさにしょうゆを“育てる”感覚を楽しんでいただけるようになっています」

ボトルブリューの写真
BOTTLE BREWの専用キット(提供写真)

花田氏「毎日の食事にはあまり手間をかけたくない」という志向を持つ生活者がいる一方で、BOTTLE BREWがアプローチするのは趣味や日々の楽しみとして料理をしている層だ。

多くの発酵食品がそうであるように、しょうゆもまた発酵の進み具合によって味や香りが異なる。料理をたしなむ人にとって、好みに合わせてさまざまな使い方ができる点もBOTTLE BREWの楽しみ方の一つになる。

花田氏「発酵が始まってから日の浅いしょうゆは店頭で売られているしょうゆと比べてフレッシュで、フルーティな香り。味もやわらかいため、ドレッシングに使用したり新鮮な魚と合わせたりすると素材本来の味を邪魔しません。また、発酵が進んだしょうゆはコクが出てくるため、味の濃い食材と合わせたり、臭いをマスキングしてくれる効果もあるためクセのある食材と合わせたりするのがおすすめです。

日々変化していくしょうゆを味わいながら『何に合わせたらおいしいか』を自由に考える楽しさを味わっていただきたいです」

顧客の声を拾い上げるための、リアルの場×サブスクという選択


BOTTLE BREWは、新鮮なしょうゆを顧客へ届けるというミッションを実現するために、サブスクリプション型サービスを選択している。

花田氏「私たちがBOTTLE BREWを通してお伝えしたいしょうゆの魅力は、鮮度から生まれる香りと、味わいの変化です。1年かけて熟成させながらしょうゆを使う、というサービスもあり得たかもしれません。しかし、それでは香りが楽しめるできたての状態は最初だけになってしまう。であれば、定期的に新しい発酵元液が届き、常に新鮮なしょうゆを育てて楽しめるサブスクリプションが適していると考えました」

新鮮なしょうゆを家庭で育てて楽しんでもらうために、サービスの入口にもこだわりがある。BOTTLE BREWの利用には、申し込み後の体験会でサービスの概要やしょうゆの製造方法についての説明を受けるか、ハウツー動画をオンライン上で視聴することが必要なのだ。手軽なオンライン申し込みだけで完結せず、利用者にとってはハードルになるとも思えるようなステップをあえて設けている。

花田氏「新鮮なしょうゆの魅力をダイレクトに届けたいという思いがあります。β版ローンチ前に社内でモニター調査を行ったのですが、『つくり方がわかりにくい』という声が複数ありました。しょうゆ会社の社員にとって難しいということは、一般のお客様にとってはさらに難しいはず。購入いただいてもしょうゆをつくれず、サービスを使わなくなるという結末を避けるには、より丁寧にスタートできるように設計する必要がありました。そのために体験会やハウツー動画を通して、サービスについて理解を深めてもらう機会を必須にしたんです」
次ページ > 感動を生む体験会から顧客との接点をつくる

執筆=藤堂真衣 編集=木村和博

ForbesBrandVoice

人気記事