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2020.08.26 11:00

逆風から変革を。ニューノーマルなオフィス、働き方の実現のためWeWorkが成すべき使命

日本進出からおよそ2年半。いまや全国各地で35以上の拠点を運営するWeWork Japan。

上陸当初は本国である米・WeWorkの大規模な資金調達のニュース、メンバーと呼ばれる利用者へのビール無償提供など、従来のコワーキングスペースとは異なったブランディングで大きな話題を呼んだ。一方で、昨今の本国CEO更迭騒動など、同社に対して疑問符を浮かべた読者もいるだろう。

しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、社会全体の働き方が見直されているなか、同社には今、多くの問い合わせが寄せられている。

「サードプレイスを活用した働き方や、投資と同じようにビジネスの拠点をポートフォリオのように捉える考え方が、これからもっと一般的になっていくのではないでしょうか」

そう語るのはWeWork Japan最高戦略責任者の髙橋正巳だ。

あらゆる企業が今、働き方やオフィスの在り方を根本的に見直すべき状況にある。そのなかでWeWorkをはじめとしたフレキシブルオフィスはどのような役割を担っていくべきなのか。また、ほかにはないWeWorkの価値とは何か。

WeWork Japanを創業時から知る髙橋の言葉から、同社の現在と未来を紐解いていこう。

「ひとつ屋根の下」だから生まれる、他業種同士のコラボレーション


2018年2月、六本木のアークヒルズサウスタワーに最初の拠点をオープンしたWeWork Japan。この少し前、17年12月に髙橋は同社に入社している。

髙橋はかつてソニーで働き、シリコンバレーでベンチャー企業の発掘や買収、投資業務に従事し、やがてUberの日本法人の社長としてUber Eatsを立ち上げた人物だ。

彼を突き動かしていたのは「日本から、もっと多くのイノベーションを生み出す環境をつくりたい」という思い。ゼロからサービスを設計・実現できる環境は髙橋にとって大きな魅力があったという。

今や同社は日本では35以上の拠点を運営し、6都市へと広がりを見せ、契約しているメンバーは2万2000名以上にのぼるWeWork Japan。

一般的なコワーキングスペースとの違いはいくつかあるが、中でも特徴的なのは各拠点にいる「コミュニティーマネージャー」の存在だ。彼らは異なる企業や団体、個人間のメンバー同士のコミュニケーションを促進し、“コラボレーション”をいくつも生み出してきた。

例をあげると、静岡市とビックカメラといった官民の連携がWeWorkから生まれた。他にも、大日本印刷とアサヒビール、QUOカードとペヤング焼きそばなど、さまざまなコラボレーションの土壌となっている。

「通常では同じコンテクストでは出会うことのない業界や職種の方が交わること、それが“コミュニティー型ワークスペース”をうたうWeWorkの特徴です。日系企業と外資企業、自治体やNPOなど、多様なバックグラウンドのメンバーで連携が生まれるのは、ひとつ屋根の下で同じコミュニティーに属すというコンセプトがあるからこそです」

ところが2019年、冒頭にも書いたとおり米国法人のWeWorkではCEO更迭、IPO申請を撤回せざるを得なくなるなど、日本の躍進にも影を落とす出来事が起きた。

しかし実は、センセーショナルな報道とは裏腹に、経営面では独立しているWeWork Japanへの影響はそれほど大きくなかった。

「WeWork Japanは米国法人の子会社ではなく、ソフトバンクとWeWorkとのジョイントベンチャーです。日本は独立して事業を運営しているので、米国での出来事は弊社の経営を揺るがすようなダメージを与えるものではありませんでした。もちろん、借りているオフィススペースの不動産オーナー、不安を抱える入居者といったステークホルダーに一定の説明をする必要はありましたが」

そして今年に入り、世界中のビジネスに甚大な影響をもたらし続けている新型コロナウイルスが蔓延。WeWorkにとって逆風のような出来事と見えるが、実態としては一拠点集中型のオフィス運営をしている企業を中心に、集団感染のリスクを下げることを目的とした契約をする企業が増えたという。

こうしたことを見越して、WeWorkでは全世界でいち早く感染症対策を策定・実行し、各拠点の安全性を高めている。日本でもこの施策を生かしながら、今夏だけで6つの新拠点をオープンしたという。

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聖域とされたオフィス維持費すら、見直される今こそ変革を


日本でも2020年4月はじめに緊急事態宣言が出された。業態や地域によりばらつきはあるが、これによってリモートワークが日常になった読者も少なくないだろう。

自宅など、オフィス以外の場所で仕事をするようになると、こんなことがふと頭をよぎる。

──今までなぜ、毎日同じ時間に会社に通って仕事をしていたのか。会社にとって、オフィスは本当に“標準装備”であるべきなのか ──

もちろん業態や職種によってはオフィスで勤務することが不可欠な場合もある。ただ、リモートワークの導入により、今までのように社員全員にデスクを用意するオフィスの在り方は果たして正しいのだろうか。マストハブとされた固定費も見直される時代が来た。

髙橋の耳にも、オフィスに不要なスペースが増えた、オフィス費用を削減したいという声が届いた。

この流れを踏まえ、WeWork Japanは7月1日に日本独自の新プラン「We Passport」をローンチした。これまでのプランでは、使用する拠点をあらかじめ決めてから契約するシステムだったが、We Passportは複数の拠点を利用することを前提にしたプラン。メインとして契約した拠点のオフィススペースと共用スペースのほか、他拠点の共用スペースを柔軟に使えるようにした。

パンデミックはまだ収束せず、企業からの需要が読みきれないタイミングの中、あえて“攻めの姿勢”を見せたことには理由がある。

「We Passportを活用いただくと、例えば、席として用意するのは20席、パスポートは50人分発行して、必要に応じて他拠点を利用していただく、ということができます。企業としては社員に柔軟な仕事環境を提供しながらも、一人当たりの占有スペースを減らすことができるのでコストの削減にもつながります」

朝起きて会社に行くこと自体は仕事ではない。日々の業務を行うなかで、必要性や状況に合わせて働く場所、時間を選ぶ時代が訪れようとしている。

とはいえ社員の立場からすれば、自宅やカフェではなく、仕事をするために最適化された場所があることが理想的だ。その存在が、仕事場の文脈における「サードプレイス」(第三の場所)であり、まさにWeWorkが提供しているものだ。

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企業間、そして組織......あらゆる壁を無くし、社会課題の解決を


このWe Passportをはじめ、新たな取り組みを進めるなかで髙橋が改めて気づいたことがあるという。それは、「WeWorkというサービス」のデザインにおいては、BtoCとBtoB両方の視点を同時に持つ必要があることだ。

「外的環境の変化が大きい昨今、同時並行でさまざまなレイヤーの課題を認識し、解決していくことが求められます。実際に、営業の人間でもサービス設計にまで踏み込むべきだし、そういったマインドがなければ新しいことは生み出せない。今回、私たちが新プランを生み出せたのも日本法人が独自に動ける裁量があるからであり、職種の壁を超え、皆で社会課題を解決したいと本気で思ったから。ほかの外資系スタートアップとの違いというか、WeWork Japanで働く醍醐味だと感じます」

髙橋も当初は営業などに従事しながら日本での基盤をつくりあげ、7月から戦略部門を立ち上げた。2年半で順調に拠点数を伸ばしながらも、「まだスタートアップに毛が生えたくらいのスケール」だと話す。

「WeWork Japanは課題を自ら見つけられるプロアクティビティを持ち、高速でPDCAを回せる人材が活躍できる文化です。WeWorkというサービスを通じて、自分が社会に対してどういうインパクトを出し、どう貢献するか。異なるカルチャーやバックグラウンドを持った人たちが交りあって新しい価値を生むのは、各拠点に入居しているメンバーだけでなく、その環境をデザインする社員も同じです」

WeWorkとは、単なる“便利なコワーキングスペース”ではない。

自分の外側にあるものに好奇心を持ち、そうした人と人とが交差することで化学変化を起こす。その実験場が、“コミュニティ型ワークスペース”と呼ばれる空間の正体なのだろう。

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