例えば、日本人社員に対して年次有給休暇が2週間あると伝えても、仕事が忙しかったら、空気を読んでその半分しか使わないかもしれません。そして残りの有給休暇が翌年度へ繰り越されたとしても、やはり1週間分しか使わないかもしれません。しかし、外国人に2週間の有給休暇があると伝えたら、彼らの多くはその2週間を全て消化するでしょう。年度中に使い切らなかったとしても、いずれ使い切るものとして認識しています。
些細な問題のように思えるかもしれませんが、このようなギャップが業務上の様々な場面で出てきます。例えば、2週間後までに完了しなければならないプロジェクトがあるとします。もしプロジェクトを1週間で終わらせることができるとしたら、残りの1週間も19時まで残業する必要はあるでしょうか? 日本人なら、他の人たちがまだ会社に残って仕事をしているからと、空気を読んで自分も残るかもしれません。これが外国人なら、仕事が終わり次第、さっさと帰宅するでしょう。
もちろん例外はありますが、要するに、多文化組織では日本特有の常識を当てにすることができないということです。文化の違いがあっても誰でも理解できるように、相手に求めていることを明確に伝える必要があります。
給与やキャリアについてもっと率直に話し合う
日本人であろうと外国人であろうと、ほとんどの人は給与やキャリアアップに関心があります。しかし、私たちが話した多文化組織の経営者たちの共通の認識としては、外国人社員の方がそれらについてはっきりと意見を言ったり質問したりする傾向があるようです。彼らは昇給を自ら要求し、ストックオプションについて堂々と尋ねます。明確なマイルストーンを求め、昇進するには具体的にどうすればいいか知りたがります。そして自分たちの仕事でのパフォーマンスについて、より頻繁なフィードバックを求めます。
このような自己主張は、必ずしも悪いことではありません。仕事ができて、向上心が高い人によく見られる特徴です。しかし、日本人からしてみれば、その主張の強さに驚かされることもあるかもしれません。これに対する解決策は、もっと積極的に給与についてコミュニケーションを取り、社員のキャリアパスについて考えることです。多くのスタートアップは、アーリーステージの段階ではまだ人事評価制度の導入にまで思い至らないかもしれません。しかし、なるべく早い段階から月次もしくは四半期ごとの業績評価を実践することで、社員一人ひとりの目標を明確にし、継続的なフィードバックを習慣化させることができます。定期的にミーティングを行い、上に述べたような関心事についてディスカッションする時間を取ることで、突然の質問に驚かされることもだいぶ減るでしょう。また、自分たちのために時間を割いてくれるというのは、社員にとってもありがたいことです。
これらのポイントについて読み進めるうちに、多文化組織を立ち上げるのは面倒くさそう、割にあってないと思った方もいるかもしれません。実際、一筋縄ではいかないかもしれませんが、メリットは確実にあります。まず、グローバルな人材プールから採用できるようになるので、特にエンジニアなどの優秀な人材を集めやすくなります。将来的に海外展開を目指しているなら、その準備にもなります。最初からグローバルカンパニーになるのは難しいかもしれませんが、それが向いている企業にとってのアップサイドは計り知れません。
連載:VCのインサイト
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