行き過ぎた「自動化主義」への警鐘
AIを活用したツールの出現によって、企業は「パーソナライズ」という武器を手に入れた。同じメッセージを一斉送信するのではなく、居住地や行動によって、メッセージの内容や送信のタイミングを自動的に変えられるようになったのだ。メール配信の自動化は、開封率やクリック率の向上に貢献した。しかし、こうした手法が一般化した結果、企業が出すメッセージからは「人間味」が失われていった。いや、人間味が失われたら、それはもはやメッセージではない。単なる「テキスト」だ。「ロボットが作ったような定型メールが最近増えた」。そう思っているのは筆者だけではないであろう。
欧米ではメール配信の行き過ぎた「自動化主義」に、警鐘を鳴らす動きが見られるようになった。例えば、メール内にあからさまなCTA(コール・トゥー・アクション=喚起したい行動)を配置せず、受け手が自ら結論を出すような設計にすべきだ、との主張が生まれた(一見すると遠回りの戦略だ)。メールを受信する側である利用者が開封率などの計測をブロックできる「HEY」というメールサービスも生まれた。
メールだけに限ったことではないが、マーケティング・テクノロジーの活用が進むにつれて、企業が持つべき「共感性」は失われていく。とはいえ、時間に追われるマーケターとしては、「自動化」という武器を手放したくない。だとすれば、テクノロジーの力を借りつつも、「人間味」のあるコンテンツを作り続けることが、最適解と言えよう。
「売るため」ではなく「つながり続けるため」に
新型コロナによって、通常の広告宣伝コンテンツを出しづらい時期があった(今後もあるかもしれないが)。地球全体が暗澹たる気分に包まれているときに、そんな雰囲気にそぐわない、ただ明るい宣伝文句を受け取った消費者は、どう思うだろうか。多くの企業が、安易にコンテンツを出せない状況が続いた。