ビジネス

2020.08.26

ミズノの「社内異分子」が、ベトナム政府の心をつかんだ理由

ベトナムの小学校で体育の授業に導入されている「ミズノヘキサスロン」。


一方でミズノ社内では、厳しい声があるのも事実だ。ヘキサスロン事業におけるミズノの収益源は、用具販売。最終目標は、ベトナムの全公立小学校1万5000校にヘキサスロンを導入することだ。

導入校は着々と増えているものの、売り上げは大きくない。「これはビジネスなのか」と迫る社内の反対勢力に、森井は2つのことを伝える。

「ひとつは、誰もやったことのないゼロイチの事業だということ。短期の一瞬を捉えるより、長い目で見てほしいと伝えています。もうひとつは、事業には意義と機能があるということ。いまは社会的意義が先行していますが、売上も追いついてきています。先日、21年6月までに1000校へ導入する締結もなされました」

手を差し伸べたのはベトナム人だった


森井にベトナム向けのビジネスの秘訣を聞くと、2つの心がけを教えてくれた。「重要なことは、違いを認めること。そして『さしすせそ』を守ることです」『さしすせそ』とは何か。

「(さ)先にやる。後手になってはいけない」

「(し)正直に言う。嘘をついたら二度と信用してもらえない」

「(す)好きにやる。ベトナム現地でビジネスをするのに、本社の伺いを立てたらスピードで勝てない」

「(せ)誠実にやる。言葉が通じなくても、同じアジア人なら誠意は伝わる」

「(そ)尊敬する。ファン・ボイ・チャウの素晴らしい精神を現代のベトナム人と一緒に思い出したい、という尊敬の念を持って話す」


森井は1971年生まれ。95年にミズノに入社して国内営業に従事した後、アジアオセアニア地域のスポーツ品販売・マーケティングを経て、2014年より主にベトナムを担当。

しかし、異国のビジネスでは予測不可能な困難にたびたび見舞われる。最大のピンチは18年9月、ヘキサスロン導入の協力覚書締結に向けた式典がベトナムで行われる3日前。本題ならもっとも喜ぶことが絶望に転じたのは、「式典は中止にする」と教育訓練省から通達されたときだ。

眼の前が真っ白になった──。森井の苦境を救ったのは、そして式典の行方は? 続きは8月25日発売のForbes JAPAN「スポーツビジネス新時代」特集にてお読みいただけます!

文=田中一成

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事