2020年8月18日には新しい研究が発表され、大西洋にはこれまで考えられていたよりも多くのプラスチックが漂っていることが示された。世界保健機関(WHO)は2019年8月、緊急の呼びかけを行い、マイクロプラスチックが健康に及ぼす影響についての研究をさらに行い、プラスチック汚染の取り締まりを強化するよう訴えた。そのなかでWHOのスポークスパーソンは、「マイクロプラスチックはあらゆるところに存在している」と述べている。
2020年8月17日には、アメリカ化学会(ACS)がバーチャル開催した秋の総会で発表された別の研究で、人間の臓器内でプラスチック由来の化学物質が発見されたことと、人間の細胞組織に含まれたマイクロプラスチックを検出できる新しい方法が開発されたことが報告された。
同総会で研究発表を行ったアリゾナ州立大学バイオデザイン研究所のチャールズ・ロルスキー(Charles Rolsky)は、「地球のありとあらゆる場所が、プラスチックによって汚染されていると言わざるを得ない。プラスチックは、わずか数十年前は素晴らしい素材だと言われていたが、今では脅威とみなされるようになった」と述べた。「プラスチックが人間の体内に侵入しつつあることは証明されている。ただし、その存在を確認しようとした研究はきわめて少ない」
科学者の定義では、マイクロプラスチックは直径5mm以下のプラスチック粒子だ。ナノプラスチックとなるとさらに小さく、直径0.001mm以下だ。
マイクロプラスチックとナノプラスチックに関するこれまでの調査研究の多くは、海洋生物の体内にどのくらい蓄積し、どの程度の影響を及ぼすかに焦点が絞られてきた。主な調査対象は、人間が食べる魚介類だ。
マイクロプラスチックは、天然魚における神経毒性作用ならびに、理論的にはがんリスクを高める可能性がある「酸化損傷の悪化」と関連があるとされている。一部の魚では、永続的な影響がなく、消化管を通過するだけであることを示唆する研究もある。マイクロプラスチックは、昆虫や鳥の体内でも検出されている。
しかし、人間の細胞組織に及ぼす健康被害については、ほとんどわかっていない。
「現時点では、マイクロプラスチックが単にわずらわしい物質にすぎないのか、それとも人間の健康に有害なのかはわかっていない」とロルスキーは言う。