経済・社会

2020.08.25 07:00

健康リスクは現在不明、体内のマイクロプラスチックが検出可能に


マイクロプラスチックは実際に、人体内に取り込まれている。少なくとも、消化器官を通過しているのは間違いない。その証拠に、世界各地に住む人から採取された糞便の多くでマイクロプラスチックが検出されたという調査結果がある。とはいえ、人間が摂取したマイクロプラスチックが体内のほかの部分へと移動するのかどうか、また、それが健康に影響があるのであれば、どのような影響なのかについてはほとんどわかっていない。

そうした疑問を調べるため、ロルスキーら研究チームは、アルツハイマー病などの神経変性疾患を調査するために設置された細胞組織の大規模貯蔵所から、人間の細胞組織サンプルを入手するとともに、サンプル内のプラスチックを検出するための新たな方法を開発した。

研究では、24人から得られた47サンプルを調査。それらのサンプルは、肺や肝臓、脾臓、腎臓など、マイクロプラスチックに暴露されたり、マイクロプラスチックをろ過したりした可能性の高い臓器から採取されたものだ。

研究では、サンプルにマイクロプラスチックを人為的に混入して新しい方法を試し、それを検出することに成功した。この新しい方法が今後は、人間の細胞組織に混入した本物のプラスチックを探すために使われることを、科学者たちは望んでいる。

研究を率いたアリゾナ州立大学バイオデザイン研究所環境衛生工学センターのロルフ・ハルデン(Rolf Halden)は、「プラスチックはどこにでもあるが、人間の体内だけにはないと信じるとしたら、それは甘い考えだ」と話す。「私たちが提供する研究プラットフォームは、目に見えないものを探すことができる。そういった粒子は小さすぎて肉眼では見えない。健康リスクは、実際に小さな粒子の中に潜んでいる」

同チームは、研究対象となった全個人の全サンプルから、ビスフェノールA(BPA)の痕跡も発見している。ビスフェノールAは、プラスチックの製造に使われる化学物質だ。

この結果に、私たちは不安を抱くべきなのだろうか?

ロルスキーとともに研究発表を行ったアリゾナ州立大学の大学院生ヴァルン・ケルカー(Varun Kelkar)は、「不安をかき立てるようなことは言いたくないが、至るところで見つかるこのような非生物分解性の物質が人間の細胞組織に入り込み、そこに蓄積され得るのであれば懸念される事態だ。それに、起こり得る健康被害についてはわかっていない」と述べた。「細胞組織内に含まれるものについて理解できるようになれば、疫学研究を実施して、人間の健康に対する影響を評価することができる。そうすれば、健康への潜在的リスクがあった場合に、それについて解明を始めることができる」

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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