ビジネス

2020.08.26

インフルエンサー事務所の戦国時代を勝ち抜く、ホリプロ子会社の3つの戦略

ホリプロデジタルエンターテインメントの代表取締役社長の鈴木秀(右)と黄未来(左)


戦略2:タレントとウィンウィンの関係を


黄:タレントにとって、ホリプロデジタルに所属することは、何のメリットがありますか?

鈴木:まずは、タレント同士のコラボレーションです。例えば、TikTokフォロワーが女性で全国一多い景井ひなが、美容整体師川島の整体に無料で通って、施術をし、それをSNSに投稿しています。あと、うちには、のぼりもえというコスメを作るために薬学部に入るほどのコスメオタクがいますが、その子にコスメの相談をすると、自分の肌に合ったカルテを無料で作ってもらえます。タレントが多いので、お互いに助け合えるんです。

笑顔の鈴木

黄:これは、めちゃくちゃ面白いですね!他のメリットもありますか?

鈴木:2つ目は、教育です。私は、“芸能人2.0”という概念を提唱しています。芸能人は与えれた役割を最大限に演じるプロで、インフルエンサーは自らの役割を作り出し発信するプロです。これを掛け算して新しいタレントを育てるために、レッスンを受けてもらっています。

黄:どういう意味ですか?

鈴木:インフルエンサーは、自分の好きなことや興味のあることを発信できますが、芸能人のようにキャラクターを演じることはできません。だから、企業から台本をもらっても、100点満点中20点しか取れません。そういうインフルエンサーを、僕はいっぱい見てきました。だから、うちのタレントには、例えばボイストレーニングで話す力、バラエティーレッスンで応対する力とかを身につけてもらっています。

黄:インフルエンサーは、若い頃から業界に入ってきてしまうので、自らの言葉で語る言語化能力が弱いという課題があると言われていますよね。企業からタイアップ案件を依頼されたときに、重宝されるのは、実は単純にフォロアーが多い人よりも、バズなどの成功法則を再現性を持って語る言語化能力のあるインフルエンサーです。でなければ、自社製品の宣伝企画を安心して任せることができないので。このような従来の弱みをカバーするために、一人ひとりに合った教育メニューを作っているのも、さまざまなインフルエンサーを見てきた、鈴木さんだからこそできる戦略ですね。

鈴木:そうですね。例えば、景井ひなは、最近MCの仕事が増えていますが、最初はしゃべれなくて、自分の意見も言えませんでした。でも、レッスンのおかげで、今はテキパキ話せるようになりましたし、プロデュースもできるようになりました。仕事が入ったら、共同で発揮した価値分のお金を、事務所とタレントで分け合います。事務所に入るお金がタレントへの投資に使われていることが、しっかりわかるんですよね。

黄:本当に面白いですね!そもそも、インフルエンサー事務所の業態について、誰も勝ち筋を見つけられていなくて、業界全体が暗いと、私は考えています。例えば、国内最大手のユーチューバー事務所でも、所属タレントがどんどん抜けてしまっているのが現状です。レベニューシェアで売り上げは取られてしまうけれど、それ以上の見返りがタレントがわにあれば、事務所に所属し続けてくれますよね。そういう意味で、鈴木さんは、ユニークで、新しい戦略を描いているなと思いました!

鈴木:ありがとうございます。我々をタレントが求めるから、ウィンウィンの関係を続けることができるので、どちらかに比重が傾いてしまうと、離れ離れにならなくてはいけないという危機感を持っています。ですから、引き続き、事務所に所属するメリットが強くなるような環境作りをしていきたいです。
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構成=MAAKO 写真=西川節子

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