東大法学部から精神科医へ。臨床から「司法精神」に挑む

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医師4年目の小林玲美子氏は、推理小説がきっかけで司法精神に興味を持ち、法学部を経て現在精神科医として研さんを積んでいる。

異色の経歴を歩み、今後のキャリアパスに悩みつつも司法精神分野での活躍を志す小林氏の目指すビジョンとは──?


精神疾患の人が見る世界を知りたい


──当初は、東京大学法学部へ進学されたと伺いました。

中高生の時、推理小説を読むことが好きで、精神疾患を持ちながら人を殺めてしまう登場人物の描写に出会いました。この時から精神疾患を抱えている人の見ている世界を知りたい、と思うようになりました。

それがきっかけで司法精神(心神喪失状態にある人が触法行為に至った場合の処遇や治療、経過を中心に研究する応用学問のこと)に携わる仕事がしたいと思うようになりました。その時から精神科医は念頭にありましたが、当時自分は文系だと思っていたため、法学部へ進学しました。


小林玲美子医師

法学部は法律をどのように解釈し、それをどのように事例に当てはめるか、という作業がメインなので当然法律が相手です。しかし、私は法学部で学ぶうちに法律よりも「人」を相手にしながら司法精神に関わりたいという思いに変わっていきました。

──その後、医学部を受験されたのですか?

実は、法学部卒業後に1度就職しているんです。就職先には東大生という学歴にとらわれず自分の人間力で勝負するため、あえて法学と異なる分野としてアパレルメーカーを選びました。

会社に務めて2年経ち、店舗責任者として後輩を見る立場になっていた時のことです。後輩の子がうつ病にかかり、仕事を休むことになったのです。身近な人が精神疾患になったことで改めて、医師として力になりたいと思うようになりました。そして精神科医を目指し、晴れて浜松医科大学へ進学しました。



司法精神への憧れと葛藤


──浜松医科大学卒業後のキャリアパスを教えてください。

そもそも司法精神の教室がある大学病院は非常に少なく、その中でも千葉大は司法精神医学領域の中では有名な大学のため、千葉大での研修を選択しました。初期研修は千葉労災病院、その後は大学病院にて研修を行いました。

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初期研修後は、引き続き千葉大で後期研修を行っています。現在の成田赤十字病院を選んだ理由は、尊敬する先輩方の出身病院であったことと、精神科救急を中心に学びたかったからです。司法精神の分野では、精神症状が悪化し事例に至る場合が多いため、精神科の中でも特に急性期対応のスキルを磨くため当院を希望しました。
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取材・文=coFFee doctors編集部

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