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(博報堂生活総合研究所)「生活圏2050」プロジェクトリーダー/クリエイティブプロデューサー

バルセロナ都市生態学庁ディレクター、ジョゼップ・ボイガス氏

博報堂生活総合研究所「生活圏2050プロジェクト」刊行の『CITY BY ALL ~ 生きる場所をともにつくる』は、人口減少や少子高齢化、気候変動、社会的格差の拡大など、様々な社会変化や危機に対して、新たな適応策を生み出そうとする国内・海外の都市をフィールドワークしたレポートだ。

社会的変化を乗り越え、持続可能な社会をつくるための創造力とは何か? 今回は「バルセロナ」編で、ジョゼップ・ボイガス氏(バルセロナ都市生態学庁ディレクター)へのインタビューの内容をお届けする。

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過去の「日常」に戻ってはいけない


鷲尾:パンデミック後のバルセロナ市は現在はどのような状況でしょうか。

ジョゼップ・ボイガス氏:今回のパンデミックによって、失ったものが非常に大きなことは確かです。世代間での命の選別にも向き合わざるを得なかった事実もあります。しかし、同時に、医療従事者や警察をはじめとする方々への思いや、市民の中の「連帯」意識が高まったという側面もあります。良い状況へと必ず進めていくのだという思いが市民の中でも高まっていると感じています。

ただし、いまだコロナ禍の収束の過程にあり、今後、様々な副次的な事態を引き起こす可能性があることを忘れてはいけません。ロックダウン中に多大な財政支援策が投じられましたが、それは後に、経済・社会的な危機をもたらすかもしれません。

鷲尾:今世界中で「新しい日常」という言葉が用いられています。ボイガスさんはこの「日常」という言葉からどのようなことをお感じになりますか?

ジョゼップ・ボイガス氏:その「日常」がどんな常態を意味するかにもよりますが、私個人としては、「過去の日常」には戻ってはいけないと感じています。この場合の過去の「日常」とは、格差社会であったり、環境問題であったり、現代の都市が抱える課題や矛盾を感じながら生活を続けていた常態のことです。

従来の都市モデルは、長い成長過程を経て現在に至っています。そして既に成長の限界に達しているとも思います。

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バルセロナ市グラシア地区(2018)(写真=鷲尾和彦)

バルセロナの都市基盤はもともと19世紀半ばのカタルーニャの都市計画者、イルデフォンソ・セルダ(Ildefons Cerdài Sunye)がつくったものですが、産業革命時代における急激な都市拡張とその過密や劣悪な生活環境に対して長い時間をかけて計画されたものでした。

その当時、都市の緑地は34.8%(1859年)も確保されていましたが、現在では、僅か0.6%しかないのです。

過去の「日常」という場合、いつの時点を指すのかにもよりますが、明らかに直近の過去の「日常」については、決してスマートな日常ではありませんでした。そのような「日常」であれば、戻る必要はないと考えています。それは既に限界に達した「日常」だったのです。

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