ビジネス

2020.08.23

無観客開催でも、全米オープンが持つマーケティング上の価値

Photo by Marek Janikowski/Icon Sport via Getty Images

女子プロテニスの大坂なおみは2018年、20歳のときに、世界のスポーツシーンに突如として躍り出た。全米オープンに出場し、物議をかもした例の決勝でセリーナ・ウィリアムズを破り、初のグランドスラムを獲得したのだ。翌2019年1月に世界ランキング1位に上り詰めると、スポンサー契約が殺到。2020年6月までの1年間で最も稼いだ女子スポーツ選手となった。その金額はセリーナ・ウィリアムズを抜き、女性アスリート最多の3740万ドル(約40億円)だった。

大坂のスポンサーであるスポーツドリンク新興メーカー「ボディアーマー(BodyArmor)」もそれにならい、一気に知名度をアップしようともくろんでいる。市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、同社の市場シェアは、2014年にはわずか0.2%だったが、2019年には10%まで拡大した。業界最大手であるゲータレードのシェア72%にはまだまだ及ばないが、ボディアーマー共同創業者マイク・リポールは、ゲータレードの市場シェアを2025年に抜くことを目指している。

ボディアーマーは2020年8月、テニスの全米オープンと複数年契約を結んだ。これにより、同社の低カロリードリンク「BodyArmor Lyte」は、新たに全米オープン公式スポーツドリンクになった。2020年の全米オープンは8月31日に開幕する予定だ。

同社と全米テニス協会(USTA)とのスポンサーシップ契約には、ニューヨーク市クイーンズのジャマイカ地区にある公立テニスコートの改修工事も含まれている。そこは、2度のグランドスラム覇者である大坂が3歳のとき、日本の大阪から移り住んできてテニスを始めたコートだ。クイーンズは、全米オープン開催地であるとともに、ボディアーマーが2011年の創業時から本拠地にしている場所でもある。

大坂がボディアーマーとスポンサー契約を結んだのは2019年のことだ。彼女を同社に紹介したのは、元NBA選手コービー・ブライアント。いきなり有名選手になった大坂が、相談にのってもらっていた人物だ。

ブライアントは2020年1月、ヘリコプター事故で悲劇的な死を遂げたが、当時ブライアントはボディアーマーに投資をしており、創業者リポールとコカ・コーラに次ぐ3番目の多額出資者だった。ブライアントはもともと2013年に、ボディアーマーに約500万ドルを投資し、10%の株式保有者となった。その後、コカ・コーラが2018年に3億ドルを出資したことで、ブライアントが保有する株の価値は2億ドルに押し上げられた。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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